いち モブおじ先生の生活 

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 それを壺の中に入れて、水を入れて丁寧に練った後、棒に塗りつけてケージの中に入れた。  ケージの中には、木で作った小さな小屋があり、そこからガサガサと音が聞こえてきた。  中から出てきたのは、蚕の幼虫によく似た外見の魔法生物だ。  蚕の幼虫が指で掴めるサイズなら、魔法生物は両手に乗せても出てしまうくらいの大きさだ。  猫くらいの大きさだと考えたらちょうどいいかもしれない。  魔法生物とは、魔物召喚を行う際に、偶然出来てしまう生物で、どうやって作り出されているのかは未だ解明されていない。  だいたいがイモムシのような形をしていて、魔力もほとんどなく、かつ何も使えることがないので、失敗作として人々からは嫌われている。  その魔法生物が、どうやって作られるのか、人々の役に立つような生き物にならないかを、日々研究するのがビリジアンの仕事だ。  そして、その生態についてを学園で教えている。  学園では、恋愛学、性学が基本の授業となるが、それだけでは時間が余るのか、魔法学や体術学、そして生物学も学習科目に入っている。  蚕によく似たジローが、練り餌をペロリと平らげたら、ビリジアンは次のケージの中に餌を入れた。  奥の小屋からのそのそと出てきたのは、モンシロチョウの幼虫に似た緑色のイモムシのサブ。  ビリジアンが入れた練り餌をもぐもぐと食べてくれた。  もともと虫嫌いだったので、最初はこの部屋に入るのも鳥肌が立っていたが、一週間も通えば慣れてしまった。  何より、魔法生物の大きなイモムシ達は、初めは恐ろしかったが、よく見たら可愛い。  名前を付けて、自分の手から餌を食べてくれたら、もっと可愛くなった。  もともとのビリジアンは一部屋を魔法生物用の部屋にして、休みの日は一日ここで過ごしていたようだ。  初めて来た時も、床には魔法生物の観察日記がたくさん散らばっていて、おまけに自分の食事の食べ残しもあり、足の踏み場がなかった。  それを集めて掃除をして、何とか動けるようにするのは一苦労だった。  ここまでくれば、ビリジアンが周囲から変わり者、変人と呼ばれていたのも納得だったが、実際魔法生物の世話をしてみると、ついつい夜更かししてしまうくらい楽しいかった。
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