みんな同じ

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(こと)りん、ショートボブ、可愛いー」  教室に入るなりかけられた可愛らしい声に、私は笑顔を向けた。 「瑠璃乃(るりの)っち、ありがと」 「ミルクティーカラーもいい感じ。マジ美味そう。ヨダレ出るわ」  瑠璃乃っちはそう言うと、口角から滴り落ちそうになるヨダレをじゅるじゅると啜ってみせた。 「やめて。そのアニメ顔で言われると本当に食われそうな気がする」 「むー。でも、もうこれ飽きてきちゃった」 「えー、もう?」 「あと2週間も我慢できない。今度サロン付き合ってよ」 「良いけど……」  私がそう呟くと共に教室のドアがカラカラと開けられた。生徒達は慌てて自分の席へと戻っていく。 「授業始めるぞー」  今日の田中先生は、口髭を蓄えたちょい悪イケオジ風だ。  私の席は教室の一番後ろ。教室全体が見渡せる、特等席だ。  真ん中の髪を針のように尖らせたパンクヘアだとか緑に染められた頭が気だるげに教壇に向けられている。  中には頭のてっぺんから黄緑色の芽のようなものを生やしている人もいる。  それでもつい目がいってしまう……。  窓際の一番前の席。  黒髪マッシュショートから覗く首元は、ほんのりと日に焼けたような色をしている。  そして、その広い背中はいつだってピンと伸びていて、ノートをとる右手は忙しそうに動いている。  きっと、少し茶色みがかった瞳は、真剣な輝きをもって教壇に向けられているんだろうな。  森本(もりもと)のナチュラルスタイルは、入学してからずっと変わらない。  個性的な子達の中にあって、彼のシンプルさは逆に目立つ存在でもあるのだ。
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