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「本当にやったんだ……」
私が自分のシャツを捲ってみせると、森本は小さく呟いた。
いつもお腹の上にあった筈のICチップはなくなっていて、代わりにあるのは、たぬきの置物にあるような大きなデベソ。
森本の引っ込んだおヘソみたいに形の良いものではなかったけれど、これは正真正銘、私の本当の体だ。
皮膚もスーツのようなつるりとしたものではなくて、薄っすらと金色の産毛が表面を覆っている。
私は改めてスーツを脱いだ自分の体を見下ろしてみる。
思っていたよりも手足は痩せて細かったし、何だか骨ばっていて不恰好に思える。
森本はこんな私の姿を見て、何て思うだろうか……。
前の方が良かったとか思うかな……。
でも……。
「これから、この本来の自分の姿で生きていこうと思うんだ」
「ポイントを貯められないから、勉強も仕事も自力でなんとかしなきゃならないよ」
「うん。スーツによって作られた世界じゃなくて、自分達の力で公平を作っていかなくちゃって思う」
森本の瞳の中には生命感にあふれた深い輝きが宿っている。その煌めきが私をまっすぐに捉えると、そのまま大きく頷いてみせた。
「自分達の未来はこの手のひらで変えられるんだね。俺達の手で……」
差し出された大きな手のひらに、私はそっと自分の手を重ね合わせる。
スーツを介さず直に伝わってくるその温もりは、優しく柔らかく、それでいて力強く私を包み込んでくれるような気がした。
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