花火

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 「天ちゃん速いよ」  私の後ろを走っていた空が私を呼んだ。  「もう平気じゃない?」  一番最後にやってきた(あおい)が息を切らしながら言った。  親にバレないようにこっそり抜け出して、3人で街の方まで走って逃げてきた。  どうせすぐに見つかってしまう。だから束の間の3人旅。  今日は、市内でも大きなお祭りの日であり、日が暮れたら花火が打ち上がる。雑誌やテレビでも取り上げられたことがある程の規模だった。  子供達だけではダメ、と言われていたけど、こうして次に三人で来れるのもいつかわからない。だから、今の内に来ておきたかった。  「こんだけ人いたらわかんないよ」  街と街を繋ぐ様に架かる橋。ここなら花火がよく見える。だからか既に人で溢れ返っていた。  小柄な私達は簡単に人ごみに紛れてしまうから、手を繋いで進んだ。  「あそこいいんじゃない」  私が指差したのは、橋の下を通る遊歩道。そちらにはあまり人がいなかった。  ドキドキして落ち着かなかった。気がつけば、打ち上がる時間のようで、橋は人で溢れている。  「そろそろかな」  と、一発目の花火が打ち上がった。それを合図に次々に上がる花火。  その花火を、花火色に染まる2人の横顔を、私は記憶に刻み付けていた。
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