第1章 諏訪家の神在様。

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そんな時、諏訪家を訪問したのは… 武田信虎「福音!」 福音「父上様!御元気でしたか?」 優香里をここまで追い詰めた福音の父親である武田信虎でした。 武田信虎「…寅王か?諏訪の血を繋ぐ事が出来たのは福音の手柄だ。」 諏訪の男児は… 神在様(かみありさま)… 神様と同じだと扱われている事もありまして諏訪家に嫁ぐ女性は神在様をこの世に産み出す為に毎日諏訪大社で祈りを捧げているのでございました。 福音「神在様を産めない人間が正室に君臨する自体間違えているわ…」 しかし… 神在様を直接産めなかったとしても 娘が男児を産めばその子も神在様。 廉華「…母の何が分かるの?」 廉華は福音に対して怒りすら覚え 武田家から来た信虎を睨みました。 信虎「…神在様ではないのに… 生意気ではないのか?」 神在様が全てで神在様ではない廉華の扱いはあまり良いものではありませんでした。 しかし… 西暦1541年に事態は急変したのです。 信虎「…晴信!父を追い出すとは…」 武田信虎は病に伏せがちだった慶子の身を案じて駿河にある今川館を訪問していましたが甲斐国に帰る道を息子である信玄〈当時はまだ晴信〉が率いる軍勢に封鎖されてしまいました。 ※晴信より信玄の方が分かりよいので信玄にしていますがまだ晴信です。※ 武田信玄「父上、 武田の運命は私にお任せ下さい。」 武田信虎「父を国から追い出すなど、 許される事ではないぞ?晴信!」 板垣信方「お館様は…晴信殿です。 このままでは…名門武田の名前に 傷がつきます。」 板垣信方は武田信玄の教育係で、 武田信虎から冷遇されていた信玄に愛を注いできた武将である。 駿河国にある今川館で 引き取られた武田信虎は… 武田慶子「…お館様に申し訳ありませんわ…父上。」 西暦1519年産まれで…今川義元とは 同い年でありその正室となっている武田慶子からは…苦言を呈されました。 武田信虎「…文句ならば晴信に言うが良いわ…。この父は被害者ぞ…」 板垣信方と甘利虎泰が晴信に呼応してクーデターに参加するなど… 武田慶子「父上にはお館様という自覚が足りなかったのでは?今川家のお館様のようになって下さらないと…困ります…」 慶子はクーデターに参加した幼い頃から知る家臣の名前に頭を抱えました。 今川義元「…慶子、その辺りにしなさい。まろは…それ程立派ではない…」 2人の間に産まれた千代菊〈=後の氏真〉はまだ3歳で無邪気に父と母の隣で微笑んでいました。 武田信虎「千代菊、これは鞠か?」 3歳になったばかりの千代菊は、 最近蹴鞠をし始めたばかりで… 千代菊「…まりがにげる…」 上手に蹴鞠をする事が出来ず、 鞠の責任にしていました。 慶子「何でも…誰かや何かの責任にしたら自分は楽かも知れませんが…それでは何も変わりませんよ…」 甘やかすのは簡単ではありますが、 父と母には子を立派にする責任があり 義元「千代菊、まろもそう思う。全て何かや誰かの責任にしていては名門今川家の当主は務まらぬ…」 2人は千代菊の事を案じるが故、 きつい言い方にはなるものの… 両親としての責務を果たしました。 すると… 信虎は急に嫌な予感を感じてしまったようで慶子相手に話し始めました。 武田信虎「慶子、福音の身に危険が迫るやも知れぬ…。晴信は諏訪を嫌っておる…」 それを聞いた慶子は、 顔を苦しそうに歪めました…。 慶子「敵に嫁がせたのは父上ですが、 晴信もそんな無下な事するかしら?」 福音の夫である諏訪頼重は信濃国・諏訪では神在様として信仰の対象でありその存在を害する事は…寺院を攻める事と同じであるとされていました。 慶子「寺院を滅ぼしては…家が滅びてしまいます…。但し…父上から冷遇されていた晴信だからこそ父上が重要視している諏訪を嫌うのはあるかも知れません…。」 しかし… 武田家を追放された信虎、 今川家の当主である義元や慶子には… 何もする事が出来ませんでした。 西暦1542年06月… 武田信虎の予感は当たり… 武田信玄は方向性を変えました。 武田信玄「…信濃国の入り口である諏訪を平らげる方が都合が良い。」 くるっと方向を展開した… 武田信玄は板垣信方、甘利虎泰などを派遣し諏訪家を滅ぼす事にしました。 福音「頼重様が居なければ私は生きられませぬ…頼重様を私から奪わないで下さい。頼重様は私の命です。」 福音は異母兄である武田信玄にすがりつき頼重の助命が条件である講和を希いましたが武田信玄は、 武田信玄「…分かった。ただ…甲斐国へ…福音の産まれた場所を知って欲しいだけだから…」 頼重「福音、案ずる事はない。 私は福音と寅王の元へ戻るから…」 頼重は福音を抱きしめながら… 優しく髪を撫でました…。 福音「頼重様が居ないと生きられないのに…私から頼重様を奪わないで!」 福音は異母兄である武田信玄が利害関係を優先する事を知っていました。 だから感情に訴えようともしましたが 武田信玄は感情なんかで1度決めた事を曲げたりしない人でした。 武田信玄「諏訪頼重には… 甲斐国で最期を迎えて頂こう…。」 甘利虎泰「…」 武田信玄は福音の願いを叶えずに、 諏訪頼重へ自害する旨の命を出し… 諏訪頼重「福音、何度生まれ変わっても夫婦になるから…待っていてくれ…」 諏訪頼重は最愛の妻である福音に、 最期の言葉を呟くとそのまま最期を迎えました…。 甘利虎泰「…福音様、お気を確かにお持ち下さりませ。」 諏訪頼重の存在に依存していた福音は甘利虎泰から頼重の死を聞くと… 福音「武田は…私の敵よ!諏訪の血が必ず武田を滅ぼす!頼重様が寂しがるから私も頼重様の元に逝く!」 武田家を呪いその代償として… 自らの命を投げ出しました…。 甘利虎泰「福音様ー!」 諏訪の神在様を喪い、 総本家は文字通り滅亡しました。
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