第2章 お館様の重責。

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第2章 お館様の重責。

ここは駿河国の今川館。 武田信虎「福音が死んだ…?」 諏訪頼重の愛に依存していた福音は、 武田を呪う代償として自らの命を差し出しました…。 その知らせが今川館に届いたのは… 西暦1543年の02月でした。 慶子「あの子は…。 父よりも姉より先立つとは…」 武田慶子は諏訪頼重より3歳下だった事もあり福音と仲良くしていた記憶はあまりありません。 西暦1537年に慶子が18歳で今川義元に嫁いだ時、福音はまだ9歳でした。 福音「姉様、どこに行くの?」 〈姉様〉と呼ぶ福音の声が少しだけ震えていたのは今となれば分からないままとはなりましたが… 慶子「父上、あの子を諏訪へお嫁に出したのがそもそもの間違いですわ…」 諏訪頼重の存在に依存していた… 福音の様子を知る人間からすれば… 今川義元「初恋とは実らぬものだと平安時代から言われておるな…」 平安の御世に(こだわ)る今川義元はさておき… 武田信虎「頼重の存在が生きる理由になっていたのかもしれないなぁ…」 福音の嫁ぎ先である諏訪家へ 度々様子を見に行っていた信虎は… それを知っていましたが… 武田信虎「晴信の責任であろう…?」 まさか諏訪家に武田軍が侵攻するなどさすがの信虎も予想する事など出来ませんでした…。 慶子「…あの娘と頼重様の冥福を祈るしか私達には出来ないけれど…」 今川義元は慶子を抱き寄せながらも 武田信玄の利害関係を重要視するところに脅威を感じてしまいました。 今川義元「…まさか…今川家まで滅ぼしたりはしない…よな?」 思った事をそのまま口にするのが 今川義元の宜しくないところでして… 慶子「冗談でもそんな事、言わないで貰えるかしら?」 武田慶子と信玄は姉弟の中では割と仲が良い方であった事もありまして… 福音の事は気の毒に感じながらも… 慶子は信玄の肩を持ちました。 慶子「晴信がそんな事をするはずないでしょう…」 千代菊は…武田信玄の甥で、 産まれたばかりの嶺は武田信玄の姪。 但し… それが通じるのなら良いのですが… なかなか通じないのが乱世の理…。 慶子『晴信なら…大丈夫よね?』 慶子は祈るような思いで武田信玄の館がある甲斐国の方角を見つめました。 武田信玄「…ハクション!」 甲斐国にある躑躅ヶ崎館に住む武田信玄は姉の声が聞こえたようで…大きなくしゃみをしました。 大井紫「…晴信、福音は貴方の異母妹ではあるけど…どうしてあんな惨い事をしたの?」 武田信玄は諏訪家の分家である高遠頼継と秘かに同盟を結んで諏訪総本家に攻め込んでおりました。 武田信玄「母上、乱世に肉親の情けは不要でございます。」 武田信玄は福音と諏訪頼重の間に産まれた寅王丸を育てながら信濃を手中に収める術を思案しておりました。 紫「寅王丸が不憫でならないわ…。 それに…」 武田信玄「廉華殿の事ですか?」 諏訪頼重と諏訪頼重の側室だった小見優香里との間に生まれた廉華は身寄りをなくした事により優香里と共に人質扱いで武田家の躑躅ヶ崎館に連れられておりました。 紫「あちらの母君は私と同じ名前ですし…他人事には思えないのです…。」 信玄の母親と廉華の母親は、 読み方は一緒ですが漢字は違います。 けれどどうやら親近感を持ってしまったようで信玄は頭を抱えました。 そんな信玄に対して高遠城の主である 高遠頼継は隠しきれない不満を持つようになっていました。 高遠頼継「…寅王丸が成長するまで諏訪の主を俺に任せると晴信は申したが寅王丸が元服を迎えたら俺の命を奪うのではないだろうか…?」 高遠頼継は疑心暗鬼になっており 家族にすら心を閉ざしていました。 高遠頼継「お前達も諏訪の分家でありながら総本家を裏切った俺の事を心の中では馬鹿にしているのだろう?」 紫遠(しおん)「殿?何を仰せになられておられるのでしょうか?」 紫遠(しおん)…高遠頼継の正室であり諏訪家の総本家に仕えていた侍女だったが高遠頼継に惚れられて妻になった…。 末莉(まつり)「父上、 一体どうなされたのでしょうか?」 末莉(まつり)…高遠頼継と紫遠の間に産まれた一人娘である。 高遠頼継「やかましい!お前達も俺の事を馬鹿にしているのだろう…!」 家族すら信用出来なくなった高遠頼継でしたが表向きは武田信玄に従ってはおりました。 武田信玄「武田の血を受け継ぐ諏訪の子と言うのはまぁ…それなりに良い話ではあるが少し弱いな…。武田晴信の甥では…」 武田信玄は人との絆を大切にするものの敵に対しては情け容赦ないところがありました。 大井紫「晴信、たまに母はそなたの事が恐ろしく感じる事があります…」 すると… 武田信繁「母上、兄上に対してそのような言い草は宜しくないと思います。私は何があろうと兄上に付き従いまする…」
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