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そう。本当に肝心なことだった。
おうちが遠いから、いつもだったら学校を出る前にトイレに寄ってから帰宅していた。今日はグレイマンのことしか考えてなかったから、そのまま外に飛び出したんだ。
もはや手遅れだった。
モナちゃんにバレる前にいち早くその場から離れる必要があった。
絶対にバレる訳にはいかない。
ママ……お母さんにもバレる訳にはいかない。だから、全身ずぶ濡れになってしまえば……
最初から傘は忘れたことにしようか。
いや、でもグレイマン、学校に置いて帰りたくないし。
さて、どうしよう。
あっ。あいつらまだ帰ってなかったのか。向かい側からコータとふうまが歩いて来る。
どうしよう、どうしよう。
パンツのグレイマンはポーズを取ったまま、黄色い涙を流している。
生ぬるい水が太ももの内側を伝い長靴にまで入ってくる。
もう、全てかき消すように僕は走り続けた。
あれ?
なんだかさっきより小降りになってきたんじゃないか?
なんだよ。
さっきまでの勢いはどうした?
雨よ、降れよ。もっと、もっと。
そして全部水に流してしまえ。
【おしまい】
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