【チェック】

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・ ・【チェック】 ・  朝起きてすぐにSNSをチェックすると、おかしな情報がまたあった。  どうやらカラスが迷惑行為を繰り返しているらしい。  カラスがクルミを掴んで、下に落として、人に当てて喜んでいるらしい。イタズラみたいな感じ?  クルミがどこかいったら代わりに小石や松ぼっくりを代用したりして、しきりに、ハイペースでやっているという話らしい。  俺はポンコツロボットを起こして、早速そのカラスが出没している地区とレーダーを照らし合わせてもらった。  するとどうやらビンゴといった感じだ。  ちなみにもう一個のギアは反応が無いらしい。  そのことを今までちゃんと聞いていなかったから分からなかったけども、そのレーダーはギアを使用された時に強く反応し始めるようで、まだ使われていない時はどこにあるかは本当に近くへ行かないと分からないらしい。  闇雲にどこにあるか探すことは得策じゃないと最初にアムロとポンコツロボットで考えて、だから使用されてから探すことにしているらしい。そういうことも最初に話してほしい。聞かなかった俺のせい? まあいいや、もう今聞いたし。 「準備できたら直行するぞ」  俺がポンコツロボットとアムロに言った、つもりなんだけども、まだアムロは寝ているようだった。  でも、 《もう食べられないなんて嘘なんよ、もっと食べられる、それが生物なんよ》  とトランパー寝言が聞こえ出したので、眠りは浅くなっているらしい。  いやオマエはもう食べられなくなっていたけどな。  俺はアムロの近くに立ってから、 「そろそろ行くぞ、アムロ」  と声を掛けると、 《もういっちょ~》  と寝言でおかわりされたので、少し大きな音のイメージで、 《行くぞ!》  とトランパーで話し掛けると、 「急にどうしたんよ!」  と言いながら、ガバッと布団を蹴り飛ばしながら上体を起こした。 「早くギアを取り返しに行くぞ」 「もうそんな時間なんよ、時間経過がえげつないんよ」  なんとなく俺は、 「ゆっくり寝られたか?」  と聞いてみると、アムロは立ち上がりながら、 「元気なんよ! 太元気なんよ!」  と答えた。あの過去の話みたいな夢は覚えていないのか? まあ夢だから覚えていないのか。  というわけで俺とアムロとポンコツロボットで、またレーダーが指し示す場所へ直行した。  現地に着くなり、カラスがクルミを持ったまま俺たちの上のほうへ飛んできて「落とした」と思ったら、クルミはアムロに当たった。  運悪いなぁ、と思いつつも、カラスは常に飛んでいる。  でもクルミを取りに来る時に降りてくるはず、と思って、その落ちたクルミから離れず立っていると、誰も他に人がいない場所から小石を拾って、またすぐさま飛んでこっちへ向かってきた。  アムロはイライラしている感じに、 「何で僕なんよ! 次は格之進に行くべきなんよ!」  と言ってアムロは俺の腰を掴んで、俺の身動きを止めようとしてきたので、 「いやそういうことじゃないだろ」  アムロを振り切ろうと思えばいくらでもできるが、下手に振り払おうとすると逆にアムロが吹っ飛んでケガをしてしまうかもしれないから、一応そのまま立ち止まっておくと、カラスの小石はまたアムロにヒットして、 「ちゃんと狙うんよ! 何で僕ばっかなんよ!」  とアムロが叫べば、カラスはまるで笑っているように、 「かかかかかかー!」  と鳴きながら、アムロの上空を楽しげに旋回した。  アムロは手足をじたばたさせて、ジャンプし始めた。  全然届きそうには無い、と思ったら、カラスはウサギの時みたいにギリギリ届きそうな距離を飛んで挑発しているような動きをし始めた。  というより、カラスは多分アムロがギアを持っていると匂いで分かっていて、アムロを疲れさせたところで奪おうとしているわけだな。  そんなことを考えていると、またギアの入っている袋をアムロは俺に渡してきて、 「こっから本気なんよ! 本気なんよ!」  と言って落ちている小石をカラスに向かって投げ始めたアムロ。  当然カラスは余裕でかわして、アムロの投げた小石は通行人に当たりそうになって、危ない! と思った。  今ここは普通の道路で、歩道は広いけども、歩道にしたら程度なので、ここでバトルみたいなことはできない感じがする。 「アムロ、ポンコツロボット、まず自由に動ける河原へ移動しよう」 「いや! 僕はここで勝てるんよ!」 「正直そんな感じしないし、多分攻撃するならやっぱり一旦撃ち落とさないといけないはず。ここは他にも人がいるからダメだ」  それに対してポンコツロボットが、 「でも生物はギアが落ちていた場所から動かないと思われます」 「大丈夫、一瞬ギアを見せるから」  そう言って俺はアムロから受け取った袋を開けて、中のギアを見せると、カラスが豹変したような瞳をして、アムロの上をバカにするように飛んでいたのに、そのカラスはまた人がいないところからクルミを掴んで、俺に向かって落としてきた。  それはかわしたんだけども、すぐさまカラスはまた別のところから小石を拾って、俺に向かってまたしても落としてきた。  さっきまでは狙いがアムロだったというわけだが、でもギアを持っていることを見せたことにより、狙いが俺に代わったわけか。  明らかにカラスはこのギアを狙っている、と思った刹那だった。  また小石を落としてくると思ったら、突然急降下してきたので、俺はギアをかばうようにその場にしゃがみ込むと、カラスの爪は俺をかすめた。 「今がチャンスだったんよ! 格之進!」  俺は立ち上がりながら、 「この場合は周りで見ているアムロのほうだろ! ポンコツロボット、近くの河原へ直行しよう!」  と俺が叫ぶと、ポンコツロボットはあわあわしながら、 「大丈夫ですか! 格之進様! あぁ! 危ない危ない!」  とまたポンコツ癖が出てきていたので、アムロへ、 「早くポンコツロボットに河原への指示を出してくれ!」 「分かったんじゃ!」  というわけで俺とアムロとポンコツロボットは河原に向かって走り出した、と思ったらアムロだけ余裕そうに歩いている。  いや足並み揃わないなぁ、そりゃもうアムロを攻撃しようとしなくなったけども、カラスを倒す時は二人でやったほうが絶対楽なのに。  河原にまず俺とポンコツロボットが着いた。  アムロはまだ遠くをゆっくり歩いていた。ポンコツロボットがアムロを迎えに行こうとしたので、俺はできれば、と思って、 「ポンコツロボットにはいてほしい。カラスにとってポンコツロボットは不確定要素だから、警戒しているところもあると思う。ポンコツロボットがいなくなったら俺は強硬策を取られて、もしかしたらギアを奪われてしまうかもしれない」 「そ! そんな! じゃあわたくしはどうすれば!」  そうパニックになっているような目になったポンコツロボット。瞳が×になったから間違いないようだろう。  いやでも、 「とにかくポンコツロボットはただここで立っていて、アムロのことを待っているだけでいい。大丈夫、俺のことを信じてくれ。俺はポンコツロボットを信じているから」 「は! はい!」  と背筋をピンと伸ばしたポンコツロボット。  カラスは俺のことを挑発するように、 「かかかかかかかー!」  と笑いながら上空を旋回している。  多分河原という石まみれの場所に引き込まれて、むしろ自分に有利になったと思っているんだろう。  でもここは諸刃の剣、俺も石を投げつけ放題というわけだ、そのことはあまり理解していないらしい。  作戦は二つあるが、できればこの石を当てる作戦を上手くいかせたい。  ただ何が起きるか分からないので、一応ここでアムロにトランパーで聞くことにした。 《アムロ! できれば早く来い! あとアムロが食べ過ぎて腹痛になった時、ポンコツロボットが薬を調合したけどもそれは俺用の薬も作れるのか? ポンコツロボットは!》 《僕も急いでるつもりなんよ》 《いや完全に歩いてる確定だろ! いやそっちはどうでもいい! それより俺が感染症とかに掛かった時でも薬は調合できるのかっ?》 《地球で起きる全ての事象程度なら可能なんよ、ポンコツロボットは地球人からしたら優秀ロボットなんよ》  そう何だか自慢げにそう言ったアムロ。まあそれは分かる。こんな自立してしっかり喋るロボットはどう考えても優秀だ。  さらに薬の調合ができるのならば、二番目のプランになってもいけるかもしれない。まああくまで俺はこの石投げプランでどうにかしたいが。  ということわけで、と、まず大体分かっているが、改めてポンコツロボットにカラスの能力について聞くことにした。 「このカラスは体力が強化されている確定だよな? ポンコツロボット。だからこんな長時間飛んでいられるんだよな」 「その通りです! このカラスは体力を強化して無尽蔵の移動を可能にしています!」  ということは休んで止まるということはない。  こっちが疲れる前に勝負を決めなければならない。  俺は試しに本気の力で石を持ってカラスへ向かって投げつけてみた。  でもそれは余裕でかわして、またしても、 「かかかかかかー!」  と言って笑うカラス。やっぱり人間の投擲速度じゃ当たることはないだろう。  こういう野生の生物は動体視力が人間とは違い過ぎる。だからもっと速く、つまりはポンコツロボットの腕力で投げなければ当たらないだろう。  でも今はオウム返しさせようにも、ポンコツロボットがまだ来ていないアムロに気をもんでしまい、オウム返しをさせることもできそうもないし、俺とポンコツロボットの二人っきりでやっても上手くいかないと思う。  タイムラグもあるし、俺とアムロでオウム返ししまくって、カラスのタイミングをズラすしかない。  と、考えたところで、またカラスが急降下してきたので、俺はまたギアをかばうように、しゃがんだその時だった。 「うっ!」  カラスが爪で俺の右肩を引っ掻いてきたのだ。  やっぱりそうだ、俺の体力を消耗させるなら当然攻撃してきたほうがいい。  カラスは元々知力のある生物だ。こうやってゆっくりダメージを与えていくと考えているわけだな。 「ひぃぃっ!」  ポンコツロボットが俺の肩を見て悲鳴を上げ、その場をぐるぐると回り始めて、完全に混乱しているようだった。  このランダム性のある動きを利用してオウム返しさせ、石を拾わせて投げつけさせたいとも思うが、でもそんな上手くいくか? とも思う。  ポンコツロボットが投げた角度にカラスがいないと当たらないって無理ゲーでは? やっぱりこの石投げプランではダメかもしれない。  まあもうポンコツロボットは完全にパニックになっているので、絶対にオウム返しもさせられないと思うけども。  カラスはポンコツロボットの様子を見て、 「かかかかかかー!」  と笑って旋回。  俺はポンコツロボットに聞こえるように、大きな声でこう言った。 「ポンコツロボット! まず俺の話を聞いてほしい!」  ポンコツロボットには聞こえたようで、その場でピタッと止まったポンコツロボット。  俺は続けることにした。 「一応の確認なんだが、このギアって俺も使えるのか?」  ポンコツロボットはゆっくりと振り返ってから、 「多分、使えると思います。全生物が使えるように設計されていますので」 「じゃあ俺、大きくなるわ。カラスが急降下してきたタイミングで、大きくなって一気に上から取り押さえる。もしかしたら俺の力でカラスを倒せるかもしれないから、能力を強化するギアも使うわ」 「そんな! 格之進様がそんな体を張らなくても!」 「いやこうするしかないだろ。もし俺がボロボロになって倒れたら、きっとギアの袋はアムロが持つことになる。でもそうなったらもう負けだ。アムロも俺と同じようにボロボロになってしまうからな」 「それはいけません!」  そう言ってまるで壊れたように飛び跳ねたポンコツロボット。  俺はポンコツロボットに少し小声でこう言った。 「チャンスは一回だ。俺がギアを取り出したら絶対にカラスは急降下してくるはずだ。罠だと思ったとしても、それでも急降下してくるはずだ。勝率は既に自分のほうが高いと考えているだろうから。こうやって肩をケガしたからこそ、できる技だ」 「そこまで考えてケガしたんですか?」 「そこはちょっと考えた。いざそうなったら痛いけどな。でもさっきアムロにトランパーで確認して、カラスが感染症の菌を持っていたとしてもポンコツロボットが薬を調合して俺も治せるって話だったから」 「はい、調合することはできます」 「だから俺はこれに賭ける。ポンコツロボットは近くにいてほしい。アムロがカラスを抑えている俺を目視すればキックのオウム返しをさせるはずだから」 「分かりました」  そう頷いたポンコツロボット、そのタイミングでまたカラスは急降下してきて、俺がまたギアをかばうように、さっきと全く同じようにしゃがみ込むと、右腕を引っ掻いてきて、服は破れて腕の皮膚は少し切れた。 「ひぃっ!」 「これでいいんだ、ポンコツロボット。こうやって同じ動作しかできない人間ということをカラスに示すんだ。でもこれ以上ケガはしたくないし、やるぞ!」  俺は袋から体を大きくするギアを手にすると、カラスが目の色を変えてまた急降下してきた。  俺は一瞬しゃがみ込むような動作をしつつも、ギアを使用するという感覚を強く持った。  するとあの時のアムロのようにぐんぐん大きくなっていき、低空飛行しているカラスを見下ろすような視点になったところで、俺は思い切り足でカラスを踏んづけた。 「かぁぁぁああああああああああああ!」  カラスは鈍い声を上げて、ギアを体から吐き出した。  俺は一応アムロが来るまで、カラスを踏み続けて、アムロはギアをちゃんと拾ったところで足を放して、ギア解除の感覚を探って元の大きさに戻った。  カラスには体力強化の残り香みたいなものがあったらしく、踏まれていてもちゃんと生きていて、逃げるように遠くの空へ飛んでいった。 「すごいんよ! 格之進はすごいんよ!」  とアムロが叫んだところで、またトランパーの声が聞こえてきた。 《でもちょっと危険なんよ……》  一瞬「えっ?」と思ったけども、それは多分このやり方で、ケガをしてまでギアを手に入れようとするやり方が気に入らなかったのかなと思った。  俺はポンコツロボットへ、というかアムロへ、 「俺のケガを治す薬を調合させてほしい」 「それは勿論なんよ! ポンコツロボット! 格之進を診断して完璧に治すんよ!」 「はい! 分かりました! アムロ様! 格之進様は深呼吸しながら座ってください!」  俺は大きめの石に座って、ポンコツロボットから診断してもらい、飲み薬と塗り薬で万全になった。  あとは一旦寝たいなぁ、と思っていると、アムロが体力を強化するギアを手にしたと思ったら、早速使用し始めた。 「ちゃんと格之進に勝っておきたいんよ! 僕のほうがすごいんよ!」  いやいや、休ませろよ、何をする気なんだ。
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