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【体力アップ】
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・【体力アップ】
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「体力アップした僕と鬼ごっこで勝負するんじゃ!」
「いやギアを使った時点でそっちの反則だろ」
「元々僕のモノなんだから反則じゃないんじゃ! 反則率は細(ほそ)なんよ!」
「反則率が細ならちょっとくらいはあるって意味じゃん」
「それはまあそうなんじゃ!」
そう言って俺にタッチしようとしてきたアムロ。
いや、
「しかも至近距離で始めて、自分が鬼だということもちゃんと言わずにやってくるって反則確定だろ」
「よくかわしたんじゃ!」
「よくかわしたんじゃ、じゃなくて」
「でも体力は無限大なんじゃ!」
そう言ってアムロは俺にタッチしようとしてくるが、体力が上がっただけでスピードは元の通りなので全然かわせる。
多分反射神経もアムロは無いみたいで、勢い余って倒れそうになって、それはポンコツロボットが助けていた。
こんなギアを使いこなせないヤツいるんだ、と思いながら、俺は先行して走っていった。
家に着いても、まだアムロは諦めるず、俺に手を伸ばしてくる。
もうムーヴが弟過ぎる。良く知らんけども、弟ってずっとこうやって自分が飽きるまでやってくるイメージがある。
まあこうやって遊んでるのも悪くないんだけどな。
すると、アムロのトランパーが聞こえてきた。
《格之進がいつの間にかギアを使ってるんじゃ!》
使ってないわ、何のギアも使ってないから。
《もう諦めるしかないんじゃ……いや待てよ、この作戦なら!》
そう言ってぐふふと笑い出したアムロ。
一体何を考えているのだろうか。その思考がトランパーによって流れてくることはあるのだろうか。
《終わったと思ったらタッチ作戦をするんじゃ! そうすれば勝てるんじゃ!》
全部流れてきたし、全然反則だった。
でもまあ負けてやってもいいか、別に、と思って、
「もうこれで終わり。俺の勝ちな」
と言って握手を求めようとしたところで、アムロが目を輝かせながら、
「タッチなんよ!」
と言ってタッチしてから、猛スピードでガッツポーズをした。
猛スピードでガッツポーズできるようになるギア使ってる? それくらい速かった。
「僕の勝利なんじゃ! 買ったご褒美としてシュークリーム買ってきてほしいんよ!」
シュークリーム、昨日のコンビニで自分用に買ったヤツがあるな。
まあ別にそこまで執着も無いし、あげるか。
「じゃあ冷蔵庫の中にあるから一緒に家へ戻るか」
「いや僕はちょっと疲れたんじゃ。外で座っているから持ってくるんじゃ」
それくらいしてやるかと思って、俺は家の中からシュークリームを持ってきて、アムロに渡すと、
「でも格之進も頑張ったんよ、半分あげるんじゃ」
と言ってシュークリームを半分にして俺に渡してきた。
ただうまく半分にできなくて、クリームがでろでろとアムロの手に乗っかったけども。
本当は俺のなんだけどな、と思いつつも、
「ありがとな、アムロ」
と言いながら受け取って食べた。
やっぱりシュークリームって旨い。こんなクリームとろとろで反則確定だろ。
「僕も食べるんよ……うむ、うむ、うぅ……」
急に苦しむような声を出したと思ったら、アムロのトランパーが脳内に響いた。
《疲れてる時にクリーム食べたら、胃が変なんよ……》
俺はアムロのトランパーにはいつも通り無視しながら、
「どうしたんだ、もしかしたら疲れている時にクリームを食べて、胃が酔ったのか?」
と俺が思っていることみたいに言うと、
「そうかもしれないんじゃ」
と言いながら、口からべぇっとシュークリームを吐いた。
いやコイツ吐き過ぎだろ。吐くことがノルマみたいになってるじゃん。
せっかく美味しいとろとろシュークリームだったのに、疲れて酔って吐いてしまうなんて。
本当にアムロはポンコツ過ぎる。まあもういいか、家の外だったし。
俺とアムロとポンコツロボットは家の中に戻って、特に何も言わないまま普通に俺もアムロも寝床に着いた。
とにかくもう俺だって、というか絶対俺のほうが疲れている確定だし、まず寝ないと。上着だけ着替えてベッドに入った。
ポンコツロボットはいつもの通り、アムロの傍で座って眠りにつき、アムロはもう布団の中で寝ているようだった。
まだ寝返りを打っている段階だが、ここから、ほら、まただ。
《僕のことを一人にしないでほしいんよ……僕は棒じゃないんよ……》
一人にされる存在の例え、棒じゃないだろ。
《細棒じゃないんよ》
細さはどうでもいいだろ。
《茶色い細棒じゃないんよ》
いや別にアムロは茶色くないし、地球で言うとこの白人系だし。
《細棒の茶、じゃないんよ》
何でちょっと言い方凝ったんだよ、誰と会話しているんだよ。
そんな言い回しに変更するヤツ、ポンコツじゃなくても嫌なの確定だろ。
《乾いた細棒じゃないんよ》
色よりも水分量だな、じゃないんだよ。
そっちの方向でいったほうが訴えかけられるかもしれない、じゃないんだよ。
《友達になってほしいんよ》
でも、このトランパーで聞こえるアムロの話って、やっぱり俺の現状みたいだ。
俺の本当の気持ちというか。いや細棒とは思っていないけど、自分のこと。
《ちょっと上から来られてもいいから、友達として接してほしいんよ》
いやそれはちょっと嫌だな、対等にいきたい、俺は。
《もうカラカラに乾いてる、安(やす)ドーナツなんよ》
アムロの世界にも口の中の水分を全部持っていく安いドーナツあるんだ。
《安ドーナツの8なんよ》
数はどうでもいいだろ、オマエ一人なんだから1だろ。
《安ドーナツ街なんよ》
そんな安ドーナツだけ売って商店街なんてないだろ。
《安ドーナツ街の街灯、全部何か曇ってるんよ》
全然綺麗に整備してないな。もう終わりの商店街確定だな。
《明日にはもう無い街なんよ》
そんな急に無くなるとSFチックだけども。
《僕は駆逐されていく安ドーナツじゃないんよ、駆逐はしないでほしいんよ》
まあ駆逐されることは嫌だけども。
《あっ、オマエは……オマエは違うんよ……》
ん? 他に誰かが出てきたのか?
《オマエはもはや敵なんよ、敵だから友達になれないんよ……》
そういう関係の存在もいたんだ。でもこの言い方だと向こうは好意的みたいな感じだけども。
《ダメなんよ……そういう運命なんよ……手を差し伸べられてもダメなんよ……ダメなんよ……》
その声を最後にアムロからトランパーの声が聞こえてくることは無かった。
一体最後にアムロと夢の中で会った人物は誰なのだろうか。
勝手にアムロが敵としてみなして拒否しているのならば、アムロはちょっと人を選んでいるなぁ、とは思った。
俺は人を選んでいない。だってアムロのような訳の分からない存在と一緒に活動しているからな。
そう考えると俺のほうが重症では? まあ別にそれで確定でいいけども。俺はとにかく寂しいんだからな。
俺もほどなくして寝て、目を覚ますと、午後三時くらいになっていたので、麦茶とクッキーを用意して、少し飲み食いしていると、ポンコツロボットが起きた。
「格之進様、そろそろ最後のギアを取りに行きましょう」
「レーダー動いてる?」
「はい、今までほど速くは無いですが、確かにギアが使用されてレーダーが強く反応しています」
「じゃあアムロも起こすか、起こしておいてくれ」
とポンコツロボットに言って、俺は残っているクッキーを輪ゴムで閉じて、麦茶を飲み干してトイレに行った。
戻ってくると、アムロが俺が食べていたクッキーの残りを食べていて、俺のほうを見るなり、
「麦茶飲んでいくんじゃぁ!」
と元気いっぱいに叫んだ。
俺はアムロの麦茶を用意してやると、すぐさまグビグビとイッキして、早速玄関の外へ俺とアムロとポンコツロボットで出た。
歩きながらSNSをチェックすると、どうやら喋る猿が人間へイタズラしまくっているらしい。
喋る猿、ということは、
「ポンコツロボット、最後のギアは知能を上げるギアか?」
「その通りです。格之進様は本当に頭が良いですね」
と言ったところで、アムロが、
「僕もすごいんよ!」
という『すごい』という言葉だけでカットインしてきた。
いつも通りの根拠ナシだな、と思いつつも、この何だかんだで騒がしくて楽しかった生活もこれで終わりかと思うと、ちょっと感慨深いモノがある。
というか端的に言うと寂しい確定だ。ギアを全部集めたらきっと本来の任務というヤツのためにいなくなるだろうから。
それともウチを拠点にして、任務を遂行するのだろうか。水質調査とか植物の調査とかならこのままいるかもしれない。
まあカラスの時のような危険が無ければ、ウチを拠点にして、そのまま俺も手伝ってやってもいいけどな。
そんなことを考えていると、現場に着いた。
着くと、そこには猿が野次馬に対して小石を投げては、
「ザコ! ザコ! おいザコ! 猿!」
と言っていて、猿はオマエで確定だろと思った。
猿がザコだったら、オマエもザコということになっちゃうだろ。悪口の種類をちゃんと考えろよ。
まあそこまで知能が高くなっている感じじゃないな、と思っていると、猿は俺たち三人を目視するなり、目の色を変えて、こっちに対して戦闘態勢に入ったような気がした。
やっぱりアムロがギアを持っていることが分かるわけだな。それを奪おうとしてくるわけだ。
それを察したアムロはスッと俺にギアの入っている袋を渡してきた。
その動作を目でしっかり追ってくる猿。
ギア持っているのが俺ということはちゃんと分かっているみたいだ。さて、この猿をどう倒すかだな。
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