【ポンコツロボットとポンコツ技師】

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【ポンコツロボットとポンコツ技師】

・ ・【ポンコツロボットとポンコツ技師】 ・ 「嫌です! 嫌ですって!」  泣き顔でこちらへ突進してくるポンコツロボットにオウム返しをして、また方向転換させて、の、繰り返し。  するとアムロが声を荒らげた。 「何でタイムラグが無いんよ! タイムラグがあれば突進しているはずなんよ!」  ポンコツロボットは泣き声で叫んだ。 「それはわたくしが格之進様のことを信じてすぐに行なっているからです! わたくしはもう格之進様のことは全面的に信頼しているんです!」 「なんなんよ! ポンコツロボットにも反乱を起こされてなんなんよ! 僕との関係は全部細なんよ!」 「そうです! アムロ様……いや! アムロとの関係はとっくに冷え切っているんです!」 「関係ないんよ! ポンコツロボットとの関係性なんていらないんよ! 命令するだけでいいんよ! さぁ! オマエの大好きな格之進を自分の手で倒すんよ!」 「嫌です! 嫌です!」  そう言ってまたポンコツロボットが俺に向かって走ってきた。それを方向転換させて、かわして。  ポンコツロボットは体がギギギギと抵抗している時間にこう言った。 「馬鹿の一つ覚えですね、格之進様が思いついた作戦をそのまま使用してしまっていて」  それに対してアムロは顔を真っ赤にしながら、 「そんな言い方ないんよ! 腹立つんよ! この任務が終わったらオマエはスクラップにするんよ!」 「好きにしてください! わたくしは格之進様のいない世界にいたくありません!」  そう言いながらまた走って突っ込んできたポンコツロボットをまた方向転換させて、ポンコツロボットは急に止まれず、二十歩くらい歩いて、またギギギギと抵抗する。  ふ~むと顎に手を当てたアムロはこう言った。 「このままいってもこの繰り返しじゃダメなん? 何か別の作戦をしないとダメなん? ポンコツロボットにどう指示出そうかなぁ? でも難しい命令はできないんじゃ」  そのタイミングで俺は『いや』と思って、トランパーを使うことにした。 《ヤバイ、このままタックル作戦されたら、俺は死んでしまう……もう精神的に疲れてきてダメだ……》  でも俺は表情を一切変えず、余裕な素振りを見せる。諦めていない顔をする。  アムロは目を丸くして俺のほうを見てきたから、ニヤっと笑った。  すると今度はアムロのトランパーが聞こえてきた。 《いいんよ! いいんよ! 格之進はバカなんよ! 心の声を間違ってトランパーに乗せてしまってるんよ! じゃあこの作戦のままいくんよ! 僕の勝ちなんよ!》  こうもアムロはマジの心の声を漏らすって、本当にポンコツなんだなと思った。  勿論俺のほうは作戦だ。もう倒す算段は立ったからな。 「嫌です! 嫌です!」  そう言って走ってきたポンコツロボットをまた方向転換、こっち側にさせて、と。 「格之進様だけは助けてください!」  そう言いながらまた走ってきたポンコツロボットにオウム返し! そう! ジャンプだ!  俺がその場でジャンプをすると、ポンコツロボットもジャンプした。それは大ジャンプになる。  スピードの乗った大ジャンプは角度50度くらいで飛び出して、俺を飛び越えて、アムロの股間にヒットしたのだ。 「あぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」  アムロはその場に倒れ込み、全てのギアを吐き出した。それを俺は拾った。  俺の中ではそのまま俺のことをポンコツロボットは突進し続けると思っていたので木に登ろうと思っていたが、ポンコツロボットは止まった。  アムロのほうを見ると、口から泡を吹いて、気絶していた。気絶すると命令が解かれる仕組みなんだ。  ポンコツロボットはアムロの隣に座って、 「さすがに、アムロを治してもいいですか?」  と言ったので、だから気絶すると命令が解かれるんだ、異常があった主人を治すために、と思いながら、 「いいよ、さすがに死なれても困るからさ」  と答えて、ポンコツロボットは薬を調合してアムロを治し始めた。  アムロは五分後、目を覚ました。  ただし既に俺がアムロのTシャツを脱がして、そのTシャツで手を縛っている。  ギアは勿論全て俺の手の中にあるし。  さぁ、アムロはどうするのかと思っていると、倒れている状態から上体を起こして、急にこう叫んだ。 「ポンコツロボット! 応援発動じゃ!」  するとポンコツロボットのお腹に画面が出現した。  俺は正面からそのポンコツロボットの画面を見ていると、その画面にはナイスミドルといった男性が映った。  その男性が口をゆっくり開いた。 「一部始終は見ていた。オマエごときは切り捨てる。こんな低次元な星も制圧できないなんてな。オマエはこの星ごといらない。母船はもう帰還する。あとポンコツロボットの主従スイッチもこちらで切っておく。多分ポンコツロボットはもうそちらの格之進とやらを主人だと思うようになるだろうな。あとはそうだな、格之進、オマエなら優秀だから俺たちの船に乗せてやってもいいと思ったぞ。もしかしたら改めてスカウトに行くかもな。まあとりあえずはじゃあな」  そして画面はすぐに消えた。  呆然と開いた口が塞がらないといった感じのアムロ。  ポンコツロボットは俺に向かってこう言った。 「今のお方は、確か、アムロのリーダー的存在だったはずです」  俺は何か、もう何か、絶対ダメ確定なんだけども、もうダメだ、コイツにさっきされたこと含めて、もうあれだよ、もう。 「アハハハハハハ!」  俺はめちゃくちゃ笑ってしまった。  ポンコツロボットも申し訳無さそうにクスクス笑い、アムロはずっと放心状態、と思ったら、瞳に涙を溜めて、すぐにボロボロと泣き始めたのだ。  さすがにTシャツで腕を縛られた半裸の小学生みたいなヤツ丸出しは良くないので、まあ主従スイッチも切れたらしいので、俺は縛っていたTシャツをとって、着させようとするんだけども、アムロはそれを払いのけて、もう本当にそのままわんわん泣き出した。  あまりにも大泣きするのでポンコツロボットも困ったなぁみたいな顔をし始めた。  さて、これからどうするか、って、正直俺の中ではある程度決まっている。  だってさ、俺は結構アムロとのバカ騒ぎ、いや、これは声に出すことだ。脳内で言うことじゃない。そう、 「アムロ、俺はオマエとのバカ騒ぎ、嫌いじゃなかったぜ。アムロとポンコツロボットが良ければさ、俺と一緒に住めばいいじゃん」  それにポンコツロボットが飛び跳ねて喜んだ。  アムロは一瞬泣き止むと、こう言った。 「でも僕は格之進のこと倒そうとしたんよ! こんなヤツダメなんじゃぁあ!」  そう言ってまた泣き始めたアムロ。  いやでも、 「いいよ、そういう任務だったんだろ? でもその任務が無くなったんだから今度は友達でいいんじゃないか?」 「友達……」  また泣き止んだアムロに俺は続ける。 「俺さ、友達いなくて、寂しくて、だから怪しいアムロやポンコツロボットと共に行動することにしてさ。つまりはウィン―ウィン確定だったんだよ、俺たちの関係は」 「僕裏切ったんよ?」 「だから任務のためだろ? 元々任務が最重要なんだから当たり前確定だろ。でもそれが無くなったんならもう自由じゃないのか?」 「僕、クズなんよ……クズでダメ人間なんよ……」 「それは最終的な結果発表の時に決まることだろ、アムロは若いんだろ? じゃあまだ選考途中だから」  アムロは静かにTシャツを着始めた。  Tシャツを着終えたところで、俺はこう言うことにした。 「アムロの星の連中がもしかしたら俺のことスカウトに来るんだってさ」 「それは良かったんよ、向こうの星は地球なんかよりもよっぽど発達してるんよ。僕はもう結果発表済みだけども、格之進はこれから選考があるんよ」 「そうじゃない。俺のことスカウトしに来た時にさ、アムロが有能さを指し示せばいいんだよ。例えば地球にしかない植物を見つけて、それを二人で献上するとかさ」 「……何で格之進はそんな優しいんよ」 「最初に言ってるだろ。俺も寂しいんだよ。また俺と一緒に遊ぼうぜ。まあずっと手の掛かる弟みたいな感じで接してたけどな!」 「甘えるんよ……僕は格之進の弟として甘えるんよ!」  そう言って立ち上がったアムロ。  まあそんな甘えられても困るけども。  とにかく、 「じゃあこれから向こうの星にはない、最高の植物探してアムロが返り咲く作戦やろうぜ」 「ありがとうなんよ!」 「ポンコツロボット、いやもうその名前はやっぱり良くないな、ポンロボ、ポンロボも一緒に頑張ろう!」 「はい! そうしましょう! 格之進様! アムロ!」  するとアムロが駄々をこねるように、 「ポンロボ! 僕にも様を付けるんよ!」 「いいえ、わたくしはもう格之進様にしか様は付けません」  そんな会話をしながら、家路に着いた。  まあ話せば分かる連中だ。  これからこういう感じで楽しんでいければいいんじゃないか確定だ。 (一巻分 了)
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