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【へろへろ】
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・【へろへろ】
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薬によって痛みは無くなったとはいえ、吐いて疲れ切ったアムロはへろへろになりながら、家の中に戻ろうとしたので、俺は、
「どこに行くんだよ、ギアをまた探しに行くんじゃないのか?」
とアムロの肩を掴むと、アムロはその場に倒れるように座り込んでから、俺のほうを見上げ、
「一旦お昼寝しか方法は無いんよ」
「回復するにはもう寝るしかない確定なのか」
「お昼寝一択、全選択肢お昼寝なんよ、百択だとしても」
「そうか、じゃあもうそうなってしまったのなら仕方ない」
「格之進は物分かりが良いんよ」
そう言いながら立ち上がり、ふらふらしながら家の中へ入っていった。
ポンコツロボットは心配そうに震えてから、そのままアムロの後をついていった。
俺もポンコツロボットの後ろをついていった、が、ポンコツロボットが玄関に入った時、すごい勢いでポンコツロボットが扉を閉めて、何かもう危なかった。
後ろから俺が来てること声掛けたほうが良かったか、いやでも大体分かるだろ、俺一人でギアを取りに行かないだろ。多分次もポンコツロボットの力が無いとダメだろうし。
なんとなく今、ポンコツロボットのポンコツロボットたるゆえんが分かったような気がした。
いやまあ意思疎通をちゃんとしていなかったから、俺にも悪かったところがあるけども、あるけども、確定では、ないよなぁ……。
また俺も玄関の扉を開けて、家の中に入ると、もうアムロは布団の中で横になっていた。
それをじっと見ているポンコツロボットへ、俺は、
「まあ構造的なことは実際分からないけども、お昼寝したら大丈夫だろう。あとは起きた時に水を飲ませたりすればさ」
「だといいんですけどもぉ」
としょげているような声を出したポンコツロボット。
いや、
「ポンコツロボットに非はどこにもないんだから気にする必要は無い確定だろ。アムロが調子乗っていっぱい食べただけだからさ」
「でも一応わたくしはアムロ様のお守りをしなければならないわけで」
「完璧にこなすなんて人間だろうがロボットだろうが無理だと思うよ。少なくても今、アムロはただ寝ている状態なわけだからいいと思うぞ」
「有難うございます。格之進様は優しいですね」
そう言ってこっちを見て微笑んだポンコツロボット。
俺は耳のあたりを掻きながら、
「別に。普通確定だ」
「そんなことありません。訳の分からないギアを集めることも手伝って頂き、本当に感謝しております」
「乗りかかった舟だ、それも気にしなくていいよ、というかそれは本当はアムロから言われるべきことなんだけどもな。こうやっていろいろ考えて喋るポンコツロボットはやっぱりポンコツじゃないと思うんだけどな」
「いえいえ、わたくしはポンコツですから」
まあ確かにさっきの玄関クソ締めスラッシュは本当に危なかったけども。その話をしたら何か話の流れがおかしくなるからしないけども、とか思考してしまうところが俺は優しいのか? いや分からん。
というより、そうされたいんだろうな、とは思っている。俺は人から優しくされたことが全然無いから、こうやって自分がされたいことをしているのかもしれない。
ポンコツロボットはある程度、いや結構返してくれるし、俺のされたいことを返してくれるから、だから、
「ポンコツロボットと会話している時、俺結構楽しいよ。アムロは何か弟いたらこんな感じなのかなって感じだし、割と悪くないからさ、ギア探しはちゃんとやるから。まあなんだ、ポンコツロボットも午後の部に向けて、ちょっと休もうぜ」
「格之進様……有難いお言葉!」
そう言って瞳に涙のようなモノを浮かべながらバンザイをしたポンコツロボット。ロボットにも涙というか水分? どういう仕組みなんだろう。まあいいか。
「というわけで俺も寝るから、ポンコツロボットも睡眠取るといいと思うよ」
「そうしましょうかっ」
そう言ってポンコツロボットは昨日の夜みたいにアムロの近くで座って、目を瞑るような、目を線にして静かになった。
さて、俺も寝るかと思ってベッドに座ったところで、またトランパーの声が聞こえてきた。
《なんで、なんで、よそよそしいんじゃ……》
……また昔の思い出を夢に見て、その寝言を言っているのか?
何でアムロはそんなに昔の思い出ばかり夢に見るんだ? そんなに強烈な思い出ということか?
確かに俺も嫌なことがあった日はそれを反芻するようにそのことを夢に見た時もあるし、周りが特に強く俺のことをイジメていた時の夢は未だに見るし。
多分そういうもんなんだろうな、アムロも。
《昨日まで一緒にパン蒸らしして遊んでいたんじゃぁ……》
パン蒸らしってなんだよ、そんな遊び無いだろ。
《そんな……僕と関わると私もイジメられるって……そうだとしても言っちゃダメなんよ……》
確かにそうだけども、でも理由をしつこく聞かれたらそうするしかないよなぁ。
《一人にしないでほしいんよ……僕は一人は寂しいんよ……みんな、みんな、待ってほしいんよ……》
アムロって俺と一緒なんだな。
ずっと一人にさせられて、いやアムロはもしかしたら俺よりも大変なのかもしれない。
どんな使命を持っているのかはよく分からないが、一人で地球という星にやって来て。
でもポンコツロボットがいるだけマシか?
《こんなロボットだけじゃ心許ないんよ……僕は同じ存在がいいんよ……》
いやポンコツロボットもいいだろ、と心の中でツッコんでしまったその時だった。
《誰の声じゃ、声、声、声……》
あっ、俺の今の心の声、トランパーに乗ってアムロに届いてしまったらしい。
でもまだアムロは寝ているようで、ちょっとうなされるように寝返りを打つだけで、目を開ける感じではない。
じゃあ、と思って、俺はポンコツロボットのような喋りのフローでこう言うことにした。
《アムロ様、わたくしがいるから安心してください》
するとアムロは「うー」と現実で唸り声を上げてから、
《僕はポンコツロボットじゃ足りないんよ、僕の才能はこんなもんじゃないんよ……》
と言ったので、ダメだコイツと思った。ポンコツロボット最高確定だろ。
アムロのこと感情移入してしまいそうだったけども、こんな考えのヤツはちょっと願い下げだなぁ。
やっぱりポンコツロボットにも敬意を持っているようなヤツが良い、って、そんなポンコツロボットの肩を持つ必要も無いんだけどもさ。
とか思っていると、アムロはむくりと上体を起こして、目を覚ました。
「結構スッキリなんよ」
そう言うとすぐさまポンコツロボットも目を覚まして、
「大丈夫ですか! アムロ様!」
「寝たら治ったんよ」
「じゃあ今から水を持ってきますね!」
俺はすぐにベッドから降りて、
「大丈夫。俺が麦茶を冷蔵庫から出すから。ポンコツロボットはそこに座っていていいよ」
そう言って冷蔵庫のほうへ歩いていくと、アムロがポンコツロボットへ、
「でも、いつもありがとうなんじゃ」
とお礼を言っていて、何か「おっ」と思ってしまった。
ちゃんとそうやって声に出して感謝することは大切だからな、と完全に兄目線でアムロに対して思案してしまった。
ポンコツロボットは嬉しそうな声で、
「はい! わたくしはアムロ様に最後までお付き合いしますから!」
「勿論じゃ! ポンコツロボットは僕の家来なんじゃ!」
麦茶をコップに入れて振り返ると、アムロとポンコツロボットはハグしていた。
まあポンコツロボットのことを思う心があるのならば、合格か、って何目線だ俺。
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