13人が本棚に入れています
本棚に追加
モノクロの世界
「これからもよろしく」
なんて、信じられない。
わたしと友達になったあの子とは
疎遠になってしまった。
「友達でもないのに」
あの子はそう言っていた。
高校が離れて、わたしたちの関係は完全に他人
へと変わってしまった。
あの子の言葉と、友情はこんなにも脆いことに
わたしは、傷ついた。
わたしは舞い散る桜を見上げ、ため息をつく。
綺麗なはずの桜は色褪せて見える。
綺麗だなんて思わない。
そのくらい、わたしは重症だ。
俯くと、白いシャツと茶色いスカート、
ローファーが見えた。
友達なんて作りたくない。
どうせ、わたしから離れていってしまうのだ。
わたしは学校の玄関に向かって歩いた。
「おはよう、アズサ」
「おはよー、カレン」
クラスメイトたちが挨拶を交わす。
「おはよう! 上村さん!」
クラスメイトの三上明くんが
当然のように挨拶してくる。
茶色いネクタイに同じ色のズボンを履いている。
三上くんは輝くような笑みを浮かべていた。
幻覚かな。シッポが見える。
「……おはよう、三上くん」
わたしは笑顔をつくり、答える。
三上くんはクラスのムードメーカーで人気者。
そんな彼がいつも
何故わたしに話しかけてくるのか謎だ。
「ねぇ、上村さん」
「なに?」
「俺、犬飼ってるんだよ、名前は柴三郎!
めっちゃ可愛いいんだ〜」
三上くんが楽しそうに笑い
スマホの写真を見せてくる。
柴犬がおもちゃのボールを加えてお座りしている。
確かに可愛い。
「……可愛いね」
わたしは一言だけ言葉を発し席に座る。
それでも、三上くんはわたしの席から
離れようとしない。
「上村さんは、ペット飼ってるの?」
「飼ってない」
「そうなんだー、
もし飼うなら犬めっちゃおすすめ!!」
わたしはにっこり笑って頷く。
と、ここでチャイムが鳴り担任の先生が入ってきた。
「皆さん、着席してください」
「あ、もうこんな時間か。じゃ、またね!」
三上くんは小さく手を振り、席に着いた。
視界に映る景色はすべてモノクロ。
わたしの世界には色がない。
いつも、モノクロの世界。
先生もクラスメイトたちもみんな色褪せて見える。
これからもきっとつまらない
日々を過ごしていくのだろう。
この時のわたしはそう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!