更紗との喧嘩

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更紗との喧嘩

「花音、もう怪我は大丈夫なの?」 更紗が心配そうにわたしの顔を覗き込んできた。 「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」 わたしは更紗に心配をかけたことに 罪悪感を抱きながら微笑みを浮べる。 あれから一週間後に退院し、 今は普通の生活を送れるまでに回復した。 「それなら良かった。花音、 もう危ないことはしないで」 抱きしめてくる更紗の頭を優しく撫でつつ 反省。 「うん。ごめんね、更紗」 みんなに心配かけちゃったな。 「おい、聞いたか!?」 クラスの男子が興奮した様子で飛び込んでくる。 「佐々木茜が不倫したって」 「……え?」 どういうこと? 突然のニュースにクラスがざわめく。 更紗はスマホで何かを調べている。 「『佐々木茜、大川敦と不倫』って……」 「え!? 嘘だろ!?」 いつの間にか現れた明くんが素っ頓狂な声を上げる。 大川敦。 今、人気の俳優で昨年、女優と結婚した。 まさか。 あの、茜ちゃんが。 素直で真っ直ぐな茜ちゃんが そんなことするはずない。 「嘘。茜ちゃんはそんなことしないよ」 ずっと茜ちゃんを見てきたから分かる。 「……やっぱり、こうなるって思ってた」 更紗は神妙な面持ちになる。 「更紗…どうしてそう思うの?」 「実は、わたし茜をカフェで 見かけたことあるんだけど、そのとき 大川淳と似た人といたの。だから」 そんな。嘘だよ。 「茜ちゃんはそんなことしないっ」 教室がシーンとなってわたしに注目が集まる。 「あ…ご、ごめん…」 更紗は「いや、わたしこそごめんね」と 戸惑ったように謝ってくれたけど 気まずくなってわたしは教室から走り去った。 「ちょ、ちょっと!花音!」 「花音ちゃん!」 あぁ。わたし酷いこと言っちゃった。 自分が嫌になる。 芸能人が不倫したくらいであんなことを。 嫌われたらどうしよう。 はーっとため息をつくと両肩に何か置かれた。 ビクッとなって振り向くと更紗が微笑んでわたしの肩に手を乗せていた。 「花音っ!さっきはごめんね。」 「更紗…。わたしの方こそ怒っちゃってごめんね。 ただ現実を受け止められなかったの」 「そんなに茜ちゃんが好きだったんだね」 気づくと明くんも立っている。 「花音、嫌われたらどうしようとか考えないでね。 わたし達はずっと花音の友達、いや親友だから」 更紗が言って明くんが肯定するように 歯を見せて笑った。 そんなこと言われたら、嬉しくて涙が出てくるよ。 その日は、失恋(?)したわたしを 更紗と明くんが慰めてくれたのだった。
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