友達になりたい

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友達になりたい

「上村さん!見て見て!!」 三上くんが駆け寄ってくる。 その姿はまるで飼い主に 駆け寄る小型犬のようだった。 「茜ちゃん、映画主演が決まったんだって!」 「えっ!?」 わたしは思わず立ち上がる。 三上くんが見せてきたスマホの画面には 「茜初主演!!映画『花散る夢の中』」 とあった。 茜ちゃんが映画の初主演? 目頭が熱くなる。 茜ちゃんがデビューした時から応援してきた。 茜ちゃんは昔人を信じることが出来なかったそうだ。 親友に裏切られたからだと一年前、 テレビで言っていた。 そんな、茜ちゃんに共感を抱き わたしは茜ちゃんを応援するようになった。 茜ちゃんが出るドラマは全制覇したし、 最近出た写真集も即買った。 最初はなかなか売れなくて 初めて、ドラマに出たときは号泣した。 その茜ちゃんが。 「う、上村さん、泣かないで!  俺が泣かせたみたいになっちゃうからっ」 気づくと泣いていた。 クラスメイトたちが何事かとこちらを見ている。 「あ、ごめん。茜ちゃんが映画の主演に抜擢 されたのが嬉しくて」 わたしは涙を指で拭う。 「上村さんが茜ちゃんそんな 好きだったなんて意外だな」 三上くんが口元に笑みを浮かべた。 あのときのトラウマが蘇る。 「あ、いや、その」 三上くんには嫌われたくない。 え?わたし今なんて? 「隠さなくても大丈夫だよ。俺も 茜ちゃん好きだから」 ニカッと笑う三上くん。 あぁ、三上くんにもっと茜ちゃんの魅力を語りたい。 友達になりたい。 だけど、どうせ離れていってしまうでしょ? 胸がキュッと切なくなった。 そして、またいつもの笑顔に戻り 「そうなんだ」と一言言葉を発した。
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