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名前
「上村さんのこと、花音ちゃんって呼んでいい?」
休み時間、三上くんが目を輝かせて聞いてきた。
相変わらずの子犬ぶり。
「え、えっと」
どうしよう。仲良くなりたくないのに
名前呼びなんてしたら……。
わたしが黙り込んでいると三上くんは
にっこり笑った。
「花音ちゃん。うん、いい名前!」
嬉しそうに笑う、三上くん。
この人たらし。
「……分かった」
わたしが了承すると三上くんは蕾が
花開くような笑顔を見せた。
「じゃ、俺のことも明って呼んで!」
「いや、下の名前はちょっと……」
三上くんは瞳を潤ませて上目遣いをしている。
クッ……その攻撃は通じんぞ!
あ、やばい、三上くんがポメラニアンに見えてきた。
わたしはため息をつく。
「分かったよ、明くん」
「わーい!!上村さんが名前で呼んでくれた!」
名前だけなら良いよね。
わたしは喜びの舞をする三上くん、
いや明くんを見て微笑んだ。
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