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転校生
「初めまして、神田高校から転校してきました、
立花更紗です。よろしくお願いします。」
真面目な挨拶をする少女。
今日、わたしのクラスに転校生がやってきたのだ。
「え?」
思わず小さく声が漏れる。
それは明らかに更紗だった。
クラスメイトたちがまばらな拍手をする。
「席は、そうだな。上村の隣でいいか?」
担任の先生が言うと、更紗は頷いた。
そして、わたしのもとに歩いてくる。
心臓がバクバク鳴った。
「よろしく」
更紗が抑揚のない声で言った。
少なくともわたしにとっては友達
だったのによろしくなんて……。
「あ、う、うん。よろしくね」
わたしは笑顔をつくった。
なんで更紗が転校してきたの。
わたしを友達でもないと言った更紗が。
わたしの中に黒い感情が渦巻いた。
顔、引き攣ってないかな。
そして、その感情は後悔に変わる。
『どうしてそんなこと言うの?』
そう理由を聞けばわたしたちは
またやり直せただろうか。
後悔しても仕方ない。
だけどあのとき何か行動を移していれば
わたしたちの関係は変わっていたかもしれない。
でも、もうやり直すことはできない。
わたしと更紗の絆の糸は疎遠になったことで
完全にちぎれてしまった。
わたしは小さくため息をついた。
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