目覚め

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目覚め

「花音ちゃん!」 誰かがわたしを呼んでいる。 この声は、明くん? そっと目を開けると白い天井が目に入った。 「ここは……病院?」 起きあがろうとすると明くんに制止された。 「まだダメだよ、傷が深いんだから。 ……花音ちゃんが死んじゃうかもって すごく不安だった。 守れなくてごめん」 明くんがわたしの胸に縋りつき嗚咽を漏らす。 その様子に申し訳ない気持ちになった。 「心配かけてごめんね」 わたしは泣きじゃくる明くんの頭を撫でる。 「明くんはわたしにとって大切な人だから 失いたくなかったの。でもこんなことになって 悲しませてしまってごめんね」 「大切な人?」 小さい子のように顔を上げる明くん。 ちょっと待ってこの体勢、 いわゆる床ドンというやつでは? いや、床じゃないからベッドドンか。 (混乱している) って顔近い!! ドキドキしてきた。 「うん、明くんはわたしのと、友達でしょ?」 言ってるうちに恥ずかしくなり目を背ける。 「花音ちゃんが友達って言ってくれた」 チラッと明くんを見ると嬉しそうな表情をしていた。 尻尾がブンブン勢いよく回っている。 「三上くん、お疲れさ」 お母さんが白いカーテンを開けて入ってきた。 わたしたちと目が合い「あらあら」と微笑ましげな表情を浮かべて去っていこうとする。 あ、絶対勘違いされた。 「「わー!! 待って!!」」 わたしと明くんは赤面しながらお母さんを止める。 お母さんは振り向きにっこり笑った。 「若い二人を邪魔するなんて野暮な真似はしないわ」 わたしたちはその後なんとかして誤解を解いた。 疲れた。わたし病み上がりなのに。 そして、わたしは二週間も 眠っていたことをお母さんから聞いた。 二週間も…… 明くんには心配かけたよね。 お母さんが居なくなるとわたしは明くんを 抱きしめた。 「花音ちゃんっ」 「心配かけてごめんね」 『友達にも家族にも恵まれていて羨ましいと思った。 だから、三上を殺そうとした』 犯人はそう供述したという。 だから、友達もたくさんいて、仲の良い家族がいる 三上くんを狙ったんだ。 どんな理由であれわたしは犯人を 許せないだろう。 でも、大切な友達が生きていてくれて良かったと 心から思った。
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