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(初恋は敵わないって、ホントその通りだよね。先人ってすごいなぁ……)  何となくジルさんと会うのが気まずいけれど、ジルさんには何の罪もない。罪があるとすれば、花が咲き乱れる幻影を見せるあの微笑みだ。  あんな笑顔を見せられたら、誰だってジルさんを好きになってしまうだろう。  ──ジルさんの笑顔が、私だけに向けられたら良いのに……。  ジルさんへの想いに気付いたからか、今更願っても仕方がないことを考えてしまう。 (自分に優しく気遣ってくれる、格好良い人を好きにならない訳がないよね! 大丈夫大丈夫! あれこれ悩んだって仕方がない!)  私は明日に備えてさっさと寝ることにした。そうして恋心なんか忘れて、明日目を覚ませば、私の心も元通り平穏を取り戻すに違いない──!  ──と、思っていた時期が私にもありました。 「おはよう、アン。楽しみすぎて早く来てしまったが、大丈夫だろうか」  朝起きてすぐ、お店にジルさんがやって来た。 「えっ! あ、はいっ! だだ、大丈夫ですけど……っ!」
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