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「――っ、あ、ダメ……!」
「?」
「オリアナ!」
――パシッ、と乾いた音がその場に響く。
振り払った私の手が、思い切り王子様の手を叩いてしまっていて。
そして自分がしてしまった行動に青ざめた。
“王子様になんてことを!”
「ご、ごめんなさいっ、ごめ、ごめんなさいぃ……っ」
思わず視界が滲み、ポロポロと涙が溢れてしまう。
そんな私を見た王子様は、手を叩かれたというのに怒る素振りなど見せなくて。
「泣かなくても大丈夫だよ? それより、どうしてダメなの?」
そっと涙を拭ってくれた彼がやっぱり絵本の中から飛び出してきた王子様のように感じた私は、泣きながらそっと彼の前に手のひらを差し出した。
「汚いのです、わたっ、私の手は、マメだらけなの……」
代々騎士を輩出してきたレリアット辺境伯家の長女である私も、例外なく騎士になるために日夜剣を握っていて。
その結果、五歳の私の手のひらはマメができ、潰れ、そしてまたできたマメでカチカチのでこぼこだったのだ。
“絵本の中のお姫様の手はこんなじゃなかったもの”
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