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この汚く雄々しい手のひらを見られることが恥ずかしく、えぐえぐと嗚咽を漏らす私。
けれどそんな私の手のひらを両手でぎゅっとカミジール殿下は握って。
「どうして? すっごく素敵な手だよ! だってオリアナ嬢が頑張った証だもの」
屈託のない笑顔を向けられた私は、そんな彼に驚いてさっきまで流していた涙がぴたりと止まる。
“す、好きっ! しゅきしゅきしゅきぃ!!!”
「それにね、内緒なんだけど」
しっと人差し指を唇に持ってきたカミジール殿下は、どこかいたずらっ子のような表情に変えて。
「僕ね、君みたいな強くて格好いい女の子が好きなんだ!」
隣に立っていた父にも聞こえないくらい小さな声で、そっと私だけにそう教えてくれたのだ。
そして伝えられた内容は、まるで雷に撃たれたような衝撃を私に与えて。
「強い、女の子が……?」
“王子様が……強さを望んでるんだわ”
幸いにも私は強さには定評のあるレリアット辺境伯家の娘。
“やっぱりこのでこぼことした固い手は好きにはなれそうにないけれど”
それでも私の王子様が望むのなら……!!!
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