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AI・エンマ
「それではエンマ、彼等に自己紹介を」
エンマはゆっくりと顔を上げ、ブルーの瞳を露わにした。こちら側を何度か見回すと、ニコリと美しい笑みを浮かべる。と同時に、甘酸っぱい香水のような匂いが鼻腔を擽った。
『えーっとお、初めましてぇ。エンマちゃんは、エンマって名前でーす。善人は天国でまったりスローライフを楽しんでねぇ。愚かなる罪人は、とっとと滅びろぉ! 短い間だけどよろしくねぇ!』
おお、可愛い! ちょっぴりあざといアイドルみたいじゃないか、と思いかけたのは前半まで。何やら物騒な後半の言葉は聞かなかったことにしておこう。俺は心の奥に鍵を掛けた。
到底、声も機械音には感じられないし、仕草も人間みたいだ。ここまで来ると彼女は本当にAIなのか、と問いただしたくなる。
「それではここから、エンマ様による裁き……地獄裁判が始まる。ここでは貴様等に天国行きか地獄行きかの判断を下すのだ。先程も言った通り、エンマ様は貴様らを一から十まで知り尽くしておる。嘘を付くなどの下手な真似をすると逆効果だぞ、とだけ伝えておこう」
『それに近年、古臭い地獄から現代的な地獄へと変更していこう、って話になったの。最悪の場合、黒歴史を数千年間暴露される“恥ずか死地獄”に堕ちる人もいるかもねー』
エンマがそう告げた途端、辺りから悲鳴や発狂が。厨二病を患っていた、もしくは現在進行形で患っている者の魂の叫びだろうな、御臨終。俺が両手を合わせ合掌すると、同タイミングでエンマが咳払いをした。
『ちなみにー、自分は天国行きだと妄想している人に伝えておくとぉ、大半の人は地獄行きだからね』
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