俺の地獄裁判

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俺の地獄裁判

「は? 何だよ」  俺を止める必要など無いのに。こいつは欠陥品のAIだったんだな、可哀想に。 『……目撃されて警察沙汰になった数は軽く百件を超す。バレなかった数も合計すれば、それ以上なのねぇ』 「な、何の話だ」 『いや、お前が万引きした回数だよおおおおおおおおー!!』  万引き……万引き!? そんな、人聞きの悪いことを。ただ……ただちょっと。 「欲しい食品とか駄菓子とかをポケットに入れただけじゃねえか!」 『それを世間一般では万引きと称するのよぉ。というかエンマの前では嘘付けないのに! もしかして、本気でそう思っているのぉ!?』 「息をするように万引きして何が悪い!」 『お前、地獄行きがあーだこーだの前に論外だわぁー。というかお前、万引きが見つかって自転車で逃走中、トラックと衝突したのが死亡原因ってデータあるけど、何?』 「それに触れるな」 『あー、すみませんねぇー、すみませんねぇー』  エンマは、わざとらしく呆れた。とても人間対AIの口論だとは思えない。というかAIを感情的にさせた俺、ある意味凄いのでは。でもこちらには、まだ現状を切り抜ける手札が残っているっ!  俺は心の内でほくそ笑みながら、エンマに対して泣き落としを図る。AIにしては感情豊かなエンマになら、パッションで勝負出来るかもしれない。いけっ、俺の最終兵器、病気のせいにする! 「仕方無い、もう万引きについては認める。ちなみに自称・AIさんよぉ……クレプトマニア、って知っているか?」 『もちろーん。窃盗症のことだよねぇ? それを患った人には盗みの衝動が襲い、窃盗を止めようとしても、自身を制御することが不可能になる依存症』 「突然物知りっぽさ出しやがって……。まあ、御名答。実はな、俺もその一人なんだよ」  エンマは『はぁ?』と間抜けな声を出す。というか待てよ? 嘘を言っても、エンマは……何も言及しない。もしやこのAI、実際は嘘を付かせない能力なんて無くて、あの注意喚起はただの脅しだったのか!? よっしゃあ、勝ったあああああ!
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