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急展開の地獄裁判
『九割九分九厘だねぇ』
「は? 何の確率だ」
『何って、お前が窃盗症であるか否かを推測した場合の確率だよぉ』
「はあ!? ふざけるのも大概にしろよ!?」
『エンマはAIなので、計算して割り出した確率でーすぅ』
感情もあり、ぶりっ子みたいな口調のロボットらしくない奴が、変なタイミングでAIっぽさを全面に押し出すんじゃねえよおおおお!! 何だよ、急に計算とか確率とか言いやがって!
がっくり項垂れる俺の耳に入ってきたのは、淡々と俺の偽ストーリーの矛盾点や意味不明な点を述べる、エンマの声だった。
『第一、本当に窃盗症だったら閻魔帳に記載されているよぉ。ありとあらゆる情報が詰まっているんだもん。本人しか知らないことも、ね。あと演技が最悪。仮に、本当に窃盗症を患っていたとしたら、“万引きの才能”って言葉も使用しないと思うしぃ、人を騙す才能は無かったみたいねぇ』
ガチのダメ出しキターー。一か八かの賭けは、零にしかならなかったみたいだな、オワタ!
『えー、という訳で反省の色も無さそうだねー。強いて言うなら透明、って感じかなぁ。じゃあバイバーイ、地獄へ堕ち―――』
あああああああああ、こんなに容易く地獄へ堕ちてたまるかっ!
俺は法壇に手を掛けて身を乗り出すと、エンマの身体を強めに押した。エンマはバランスを崩して、後ろに倒れる。ドン、と鈍い音がすると、エンマは叫んだ。
「あーもう、何するのよ……って、え? あーーーーーっ!!」
いや、これはエンマの声ではない。おじさんというか、老人の声というか。そんな感じだ。一方のエンマ自身は、倒れた状態からピクリとも動かない。機能が停止してしまったのだろうか。
俺が慌てふためいていると、どこかから一人の老人が元気良く走ってきた。……もしかして、あの人。
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