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「じゃあ1本吸ってみようかな」私はタバコを1本貰って口にくわえた。彼女はタバコに火をつけてくれた。初めてなので恐る恐る軽く煙を吸い込んだ。その瞬間、喉の痛みとともに咳き込んだ。彼女はそれを見て笑っている。
「初めはそんなもんだよみんな。初めは煙を少なめに吸い込んで馴らしていったほうがいいよ」
私は言われたように、吸ってるのかどうか分からないくらい、少なく肺まで吸い込んだ。今度は噎せはしなかったが、吐き出す息にも煙は無かった。少しずつ吸い込む量を増やしながら馴らしていった。1本吸い終わる頃には、なんとかタバコの味とメンソールのスースー感を感じる事ができた。
「私は、みゆき。高木 深雪。あんたは?」
「私は、栗原 千秋」
「じゃあ千秋!私の事は、深雪って呼んで!」
この後、連絡先交換をした。
私は、彼女の事を聞いてみた。
彼女は小学校4年生の時に、両親を事故で亡くしたらしい。その後は、父方の弟夫婦に引き取られ、育てられたと教えてくれた。しかし、家には1つ下の娘が居て、完全に差別を受けながら育ったと言う。歳は私と同じだった。高校へは金銭的な事で、行かせてはもらえなかったらしい。勿論、自分達の実の娘は今、受験生で高校へは行くらしい。
「金銭的な事でなんて嘘に決まってる。奴ら私の両親の保険金が入ってるんだから、高校くらい行ける筈だよ」
「それってネコババしてるって事?」
「前に1度聞いてみた事あるんだけど、私一人育てる為にそんな金使ってないって言われたよ」
この時私は思った。お母さんの保険金は義父に入ってる筈。そのお金は私にも権利がある筈だ。
「最初はさほど綺麗な家では無かったのに、急にリホームしたり、娘にはいい服やらなんやら買い与えて。全部私の両親の保険金さ」そして深雪は衝撃的な話をした。
「私ね、あのエロ親父に襲われた事があるんだ。まあ私も激しく抵抗して大声も出したから未遂で終わったけど。そしたらババアが血相変えて来てさぁ。そんで、エロ親父なんて言ったと思う?私が色目を使って誘って来たって言ったんだよ。ババア頭に血が上って私の顔を何回もひっぱたいて来て。襲われた私が悪者になってさ」
「酷い。酷すぎる。そんなの許せない!」
「でもね、私一人の力じゃどうにも出来ない事なんだよね。それからかな、あの家の奴等に反発するようになったの。さっさとあんな家出て一人になりたいよ」
「私も同じ…。毎日他人のおじさんと、ひとつ屋根の下で暮らすなんて息が詰まる」
「それも微妙だよね。でも襲ってくるような事は無いんでしょ?」
「今のところは。でもこの先何が起こるか分からないよ。そう思うと怖いし、夜も眠れない」
今まで考えた事も無かったけど、深雪の話を聞いてから本気で怖いと思った。
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