第三話 『線香花火と熱い夜』

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第三話 『線香花火と熱い夜』

 夏休みに入って、一週間が過ぎようとしている。  早くも八月が迫り来る中で、私は盛大にため息をついていた。 「はぁ~っ」 「あんた、さっきからため息うるさいよ。私の部屋が全部ため息だらけじゃない」  「だって千秋ぃ…、私どうしたら良いの」 「そんなの知らないわよっ!自分で考えなさい!」 「えぇー!千秋の鬼ぃ~!」  何をこんなに悩んでいるのかと言うと、時間は昨日の夜に遡る。 「あ、大谷ちゃん。俺来週の月曜日から三日間、実家に帰るね~」 「あらやっくん、三日しか帰らないの?」 「最後の大会が近いから、部活がてんこ盛りなのよ~。あ、今日のエビチリもボーノボーノ」 「うふふ、ありがとう。人気者は大変ね」  全員で食卓を囲み夕飯を食べていれば、先輩がそう告げた。 「行ってらっしゃいー、先輩」 「気を付けてください、先輩」 「ありがとう二人とも…。でも、もう少し気持ちを込めてくれないかな?」 「…あの、私…も、月曜日から…帰ります」 「えっ!?美月も帰るの?」 「そっか、気を付けるんだぞ」 「二人とも酷いよ」  わざとらしく先輩が廉の肩口で涙を拭えば、迷惑そうに退けられる。 「みっちゃんはどのくらい帰るのかしら」 「…一週間…くらいです」 「ゆっくりしておいでね」 「…はい、ありがとう…ございます」 「みょうちゃんと廉くんは?」  「え…っと…」  美月不在の一週間に心が折れそうになっていれば、大谷さんから問いかけられたが全く考えておらず口ごもる。 「俺は特にどこも行かないっす」 「あら、そうなの?」 「あ、私も…」 「…そっか!じゃぁ、三人で温泉にでも行く?」 「でも、大谷さんもお家のことがあるんじゃ…」  お茶目な笑顔の大谷さんに聞いてみれば、彼女は少し困ったように目線を左右に移しながら、『平気よ』と言いたげに笑ってみせる。 「大丈夫っすよ、俺たち適当に過ごしてるんで。大谷さんも夏休みを楽しんできてください」 「え、でも…」 「な、明桜」 「へっ、あ、う、うん。大丈夫ですよ」  様々な事柄が頭に浮かんだがそれを素早く書き消して笑えば、大谷さんは申し訳なさそうに再び笑った。
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