第三話 『線香花火と熱い夜』

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 登校日は、どうして毎年こうも暑いのだろうか。  しかも、うちの学校は夏休みしか登校日を設けていない。 「ねぇ、見て。野球部エースの日野(ひの)くん、日焼けしてもイケメン~」  体育館に向かう途中、千秋が隣でよだれをすする。 「よしなよ、みっともない」 「見るだけただなんだから良いじゃない。それに、そういう存在がいると毎日楽しいの」 「そういうものかね」 「そういうものです。てか、明桜はないの?そういう存在」 「そもそも、って何?」 「憧れ的な感じよ」 「それって、恋とは違うの?」  素朴な疑問を投げ掛ければ、千秋が少し難しい顔をして首をかしげた。 「人それぞれだと思うけど、私は一緒にしたくないわ」 「へぇ…」  彼女よりもっと眉間にシワ深く刻んだ私が相づちを打てば、彼女が得意気な顔でこちらに言い放つ。 「『好き』は特別だからよ」 「特別…」 「胸が苦しくなるのも鼓動が早くなるのも、頬が熱くなるのも、世界で一人だけだよ」 「…そう、なんだ」  そのセリフに、思わず言葉が詰まる。 「明桜どうしたの?後ろつっかえてるから早く歩きな」  ハッとして振り返れば、数名の生徒たちが困ったように笑っていた。 「す、すみません」 「急にどうした?ビックリしたわよ」 「えへへ、ごめん。なんでもない」  笑って誤魔化し体育館へと入れば、私の隣に腰を下ろした彼女が盛大に私の肩を叩いてくる。 「痛、どうしたの?」 「あの先生じゃない!?すごいかっこいい!」  千秋が指差す方を見ると、スーツ姿の見慣れない男性が立っている。
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