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「なんか、思ってたよりずっと若そう」
自然な茶髪にメガネをかけた男性は、すらりと伸びた足にダークスーツが良く似合う。
遠目でしっかりと顔立ちは見えないものの、雰囲気はイケメンで少しクールな印象だ。
正直、そんなに関わることもないと思うので、大して興味も湧かないが。
「これは、図書館に通いつめるチャンス!」
隣でガッツポーズを決める千秋に呆れながらも、なぜかあの男性を知っている気がして不思議な気分になる。
『生徒の皆さん、おはようございます。夏休みはどんな風に過ごせていますか?一年生は…』
校長先生の長い話が続くなか、ひたすらあの男性への違和感を探し続けつていれば、その答えは本人によって告げられることとなる。
『それでは、八月から新しく赴任された先生を紹介します。それでは先生、お願いします』
一礼してステージに上がるその人物は、マイクに向かって少し低めの穏やかな声を乗せた。
『皆さん、おはようございます。そしてはじめまして。八月1日付けで赴任しました、城塚聖夜と申します。まだわからないことだらけですが、先輩の皆さんに教えていただき、一日も早くなれたいと思います。担当は図書室ですので、気軽に遊びにきてください。よろしくお願い致します』
(城塚…、聖夜…)
「あっ!」
その名前と最後の笑顔で、頭の中の遠い記憶が甦る。
「え、ちょ、明桜どうしたの?」
「あ、えっと…」
それと同時に大きな声が飛び出し、周りの注目を集めてしまった。
「二年の伊形か?どうしたー?」
「あ、先生、す、すみません。なんでもないです、大丈夫です!みなさんも失礼しました!」
顔から火が出るほど恥ずかしい事態なのに、それでも偶然の再開に胸の鼓動が押さえられなかった。
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