第三話 『線香花火と熱い夜』

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「なんか、思ってたよりずっと若そう」  自然な茶髪にメガネをかけた男性は、すらりと伸びた足にダークスーツが良く似合う。  遠目でしっかりと顔立ちは見えないものの、雰囲気はイケメンで少しクールな印象だ。  正直、そんなに関わることもないと思うので、大して興味も湧かないが。 「これは、図書館に通いつめるチャンス!」  隣でガッツポーズを決める千秋に呆れながらも、なぜかあの男性を知っている気がして不思議な気分になる。 『生徒の皆さん、おはようございます。夏休みはどんな風に過ごせていますか?一年生は…』  校長先生の長い話が続くなか、ひたすらあの男性への違和感を探し続けつていれば、その答えは本人によって告げられることとなる。 『それでは、八月から新しく赴任された先生を紹介します。それでは先生、お願いします』  一礼してステージに上がるその人物は、マイクに向かって少し低めの穏やかな声を乗せた。 『皆さん、おはようございます。そしてはじめまして。八月1日付けで赴任しました、城塚聖夜(しろつかせいや)と申します。まだわからないことだらけですが、先輩の皆さんに教えていただき、一日も早くなれたいと思います。担当は図書室ですので、気軽に遊びにきてください。よろしくお願い致します』 (城塚…、聖夜…) 「あっ!」  その名前と最後の笑顔で、頭の中の遠い記憶が甦る。 「え、ちょ、明桜どうしたの?」 「あ、えっと…」  それと同時に大きな声が飛び出し、周りの注目を集めてしまった。 「二年の伊形か?どうしたー?」 「あ、先生、す、すみません。なんでもないです、大丈夫です!みなさんも失礼しました!」  顔から火が出るほど恥ずかしい事態なのに、それでも偶然の再開に胸の鼓動が押さえられなかった。
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