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「それじゃぁ、みんな残りの夏休みも事件事故に巻き込まれないように気をつけてな」
ホームルームもの終わり、クラスのみなんが帰っていく。
「明桜、帰ろう」
「あー…、私ちょっと用事があって」
「そうなの、残念。駅前にできたカフェに行きたかったのに」
「ごめん、また今度行こう」
顔の前で手を合わせて伝えれば、彼女は笑って頷いてくれた。
そして、鋭い一言を告げる。
「図書室に行くんでしょ」
「…え」
「わかりやすっ。次遊ぶとき、詳しく聞かせてよね?」
「お見それしました…、御意」
「じゃぁ、よろしく!またね」
もう、彼女には隠し事など出来ないのだと心底思いながら、彼女の背中に手を振った。
気を取り直して帰り支度を終えた私は、三階の奥にある図書室へ向かう。
しかし、図書室には既に多くの女子生徒がやってきていた。
「見て、かっこいい~!」
「本当にイケメンだよね、どうする、中入る?」
幾人もの女子が、それぞれに同じ会話を至るところで繰り返している。
こんなことなら、千秋に付いてきてもらえば良かった。
さすがにこの中を割って入って行く勇気はなく、諦めて踵を返したその時。
「すみません、この中に図書委員の方はいますか?」
ガラガラと扉が開いたかと思えば、彼の声が響いた。
静まりかえった中で、私は訳もわからぬままおずおずと手をあげれば、安堵の表情を浮かべた彼と目が合う。
「少し手伝って欲しいことがあるんです。良いですか?」
「あ…、はい」
女子の視線を一心に浴び、変な汗が背中を伝う。
時おり落胆や羨望の声を受けながらも、私はいそいそと図書室に入った。
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