【第2話】入学式

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【第2話】入学式

 入学式に無事間に合った4人は志乃と日南、蒼真と紅賀でそれぞれ別れた。今日は入学式だと言うのにいつもの学校生活のような活気に溢れているのは天明学園の大きな特徴と言えるだろう。  蒼真、紅賀のような2年生、3年生は入学式の片付け、次の大学の入学式の設営要因で学校に来ているのだ。3年生はほとんどが天明学園の大学に進学し、少数が他大学に進学する。そのため他学校の生徒に比べて3年生の余裕度が違う。    だが、成績は皆優秀である。  ここ天明学園は勉学に励む生徒のことはとことん援助する。逆に素行が悪い生徒や成績が悪すぎる生徒は切り捨てる。成績が悪い生徒、というのは()()に没頭しすぎて勉強をしなかった生徒などを指す。勉学に励む、つまりは頑張っている生徒には、例え成績が悪くても救いの手を差し出すのだ。そうやって今まで成り立ってきた。 *** 「只今より、私立天明学園高等部の入学式を始めます。一同起立…………」  時間が刻々と経ち、入学式は淡々と進む。新入生代表の挨拶が始まった。 「へー、あの子が首席なのね」  隣にいた日南がコソッと話しかけてきた。日南は飽きていたのだ。志乃も勿論飽きていた。  首席はその名の通り成績1位の生徒のことを指す。今年は高等部から入学の女子生徒であった。プラチナブロンドの髪をなびかせ颯爽と歩く。制服の線が1本のところを見ると人間科の生徒である。  天明学園は人間科と人外科に分かれる。とは言っても、クラス、授業はぐちゃぐちゃである。そこで、人と人外の区別をつけるために制服に少し工夫が施されている。高等部は女子はグレーのセーラー服に赤い紐のリボン。男子はグレーのブレザーに黒のズボン、赤いネクタイを着用する。制服の襟袖の赤いラインが人間科は1本、人外科は2本なのだ。  志乃が首席の所属を見抜いたのは志乃が人外であり、視力がとてもいいからだ。普通は見えぬ。 「――新入生代表の挨拶とさせて頂きます」 「あ、終わった。金髪って、人外かなー」 「いや、人間だよ? 線1本だったし」 「え、見えたの。さすが鬼。というか、人間って珍しいね、いつも新入生代表って人外じゃん。陰陽師の家系でもなさそうだし」 「まあ、人外も陰陽師の家系の人たちもは頭良いし、お金あるからね。この学校、いい学校なんだけどお金にものを言わす感じがあるからねー」  そう、この学園は今は人間が管理している。その学園長が金の亡者なのだ。金は全てを解決するってね。    首席は席に戻る時、こちらの方を見たような気がした。 「え、なんか、こっち見てない?」 「見てる、なんで」    日南と志乃はドギマギしながらその後も続く入学式に挑んだ。  そして入学式は何事もなく終了した。 *** 「んー! かったるい入学式も終わった事だし、クラス発表でも見に行こ!」 「賛成! 日南ちゃんと同じクラスだったら幸せだなー」 「うーんもう、可愛いこと言ってくれるなぁ」  このやろと言って日南は志乃の頭をヨシヨシと撫でた。  そんな時だった。   「すみません、朧月志乃さんですか?」    先程の首席の女の子が話しかけに来たのだ。  なぜ名前を知っているのかと思いながらも返事をする。 「はい、私が朧月志乃です」 「嗚呼、良かった! 私は水無瀬アリスと言います。高等部からの入学です」  何が良かったのか分からぬまま話が進む。 「先生から聞きました。朧月さんが中等部の首席だったって。私、分からないことばかりなので、何かあった時は教えて頂きたいんです」  いいですか? あざとくコテンと首を傾げて返事を待つ。日南はイラついた面持ちで水無瀬アリスを見ていた。 「もちろん良いよ! というか水無瀬さん、同級生なんだからタメ口でいいんだよ?」  志乃は何も気にすることなく楽しそうに微笑む。水無瀬アリスはハリボテのような笑顔のまま口を開いた。 「まあ! いいの? なら遠慮なく、志乃ちゃん、今年からよろしくね! 私のこともアリスでいいわよ。あ、もう行くね、じゃあ後で」  何を話したかったのか要点が分からずじまいのまま颯爽と去っていった。隣で日南が笑いを越えられない様子で志乃の肩をつつく。 「あの女、志乃にマウント取りに来たのに、逆に返り討ちにされてやがんの。あーおもろ」 「うん? どういうこと?」 「いやいや、こっちの話。よっし、エントランス見に行こ!」  志乃は頭にはてなマークをいっぱい付けて、エントランスに急いだ。 ***  エントランス前は新入生で賑わっていた。 「お前どこのクラス? 俺A組!」 「くそー、違うクラス、俺C」 ――ガヤガヤ、  やっとのことでクラス発表の掲示板が見えた。 「……」 「……」 「……やった」 「同じクラスだ! やったね! 日南ちゃん!」  志乃と日南はB組だった。2人はルンルンで教室に向かった。
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