2人が本棚に入れています
本棚に追加
逢瀬の終
暗い部屋の中で、甘い吐息が響く。
カーテン越しに差し込む月明かりの下で、白く艶めかしいしなやかな身体がピクピクと小刻みに動く。
「はぁ…ごめん…私が先にイっちゃった…。京くんは…まだ…だよね?」
彼女の身体の痙攣が収まる頃に、俺はそっと彼女から離れてた。
その俺の様子を見て、彼女が心配そうな口調でそう言った。
俺が最後まで達しなかったことに、不安を感じたのだろう。
「ん…大丈夫。別に俺はイかなくても平気だよ。」
サイドテーブルに置かれていた、温くなったミネラルウォーターを流し込みながら彼女に応える。彼女が不安にならないように、微笑みを浮かべる。
「ね…京くんは、終わりにしたい?」
不意に投げかけられた言葉が、俺の胸を刺す。
何故そんな事を言う?と彼女の方に視線を向ける。
彼女は美しく、そして淋しそうに俺を見て微笑んでいた。
「最近、ぜんぜんイけてないでしょう…私の抱き方も変わった。」
ゆっくりと上体を持ち上げて、少し気だるそうに髪をかきあげると彼女。
そういう仕草がとても色気が有って、俺は好きだった。
「だって…俺たち体だけ…でしょ。俺にはもう、無理かなって…。」
「京くん…心も欲しい人なんだ…。」
少し小馬鹿にしたような、どこか悲しそうな笑みを浮かべ彼女は言う。
「ごめん…好きだから抱きたいんだ。抱いたらより触れたくなる。全部欲しくなる。身体だけでもいいって男もいるだろうけど、俺には無理…。」
俺は床に脱ぎ捨てたままになっていたシャツを羽織りながら言う。
好きだけど、交われないから、別れるしかない…
悩んだ末に俺が導き出した結論。
「そっ…か。どっちかが恋愛感情を持ったら終わりって約束だもんね…。」
「だから…これで終わりにしましょう…。」
最後の抱擁も、お別れのキスも、サヨナラの言葉もない別れ
俺たちは一度も視線を交わすこともなかった。
俺はゆっくりと部屋を出た…。
最初のコメントを投稿しよう!