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「時野谷!」
振り返るのは帽子を目深にかぶった男だ。藤原よりも若いのに若白髪が見え隠れする。彼は厭な顔一つもせずただ「どうした、藤原」とだけ言った。
「このランプ、どこに返された? 担当ではないようだが、お前なら知ってるだろう?」
時野谷は暫く、その写真と資料を見比べた後、頷いた。
「リストに載っていないのならば、盗難品ではないのだろう」
「だが、写真には載っている。盗難品だろう?」
「本人がいなければ確認のしようが無い。報告書にもあるように保管場所と思われる所にあった物を映したに過ぎない。だが、どうして急に?」
「なぁ、時野谷。お前にはこのランプに下がっている物、何に見える?」
ルーペを渡し藤原は言う。
「何に見える? 普通のアクセサリーに思える。反射も無いし、白い石だろうか?」
「俺は、歯に見える」
「何の? まさか恐竜か?」
おどける時野谷を睨み、藤原は言う。
「俺には鮫の歯に見える」
「どうしてその結論に至ったかまるで分からないな。刑事の勘だとしても、あまりにもじゃないか」
「それを判断するためにランプを探している?」
「盗難品では無いとされたのならば、ここで保管はされていないだろう」
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