報告書

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「叫ぶ暇なんてあるンすかね。人間って凄いビビッた時って声が出ないって言うじゃないッスか」 「窮地になって頭の回転が速くなる者もいるだろう」 「まぁ、そうかもッスけど。本人が行方不明の演技をしているかもしれないッスけど。だって、出来過ぎてないッスか? 壁に血に肉片に」 「その肉片は鑑定に出して本人の者だと証明された。が、まあ、本人がいないんじゃな」 「肉片だってふやけてるって書いてあるッスよ? なんかこう――……。冷凍保存してたとか、そういうのじゃないッスか?」 「わざわざ自分の肉の一部を冷凍か?」 「遺体を風呂場で解体したとしても凄い大変じゃないッスか。通報からすぐ警官は駆けつけてますし、あの部屋以外に血の跡は無かったッス」 「移動されてるのかもしれないな」 「そうかもしれないッスね」  血も肉片もあったが、致死量に至っていない。  被害者も加害者の痕跡も無い。遺書も無ければ、普段からの行動も問題だらけだった。行方不明と扱われるのは早い。
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