式野の短編集より「鮫のカゲ」

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 おかしなジジイが何者かによって殺されたらしい。  そんなウワサがすぐに広まった。  実際の所俺がジジイと呼んでいたのは、実際の所四十代の男だったらしく、空き巣をして生活をしていたようだった。  男の部屋の中には、盗難品が山ほど出てきたという。  あの事件移行俺は鮫の影を見ることがなくなった。  程なくして、母親の実家に引っ越してからはなおさら、あの海を思わせる香りもしなくなった。  暮らしが安定して俺も落ち着いたんだろう。  だから、あの魚もいなくなったのだろう。と、俺は思ってるんだ。  怖い話では無くて悪いけど、でも俺にとっては不思議で少し怖かったんだ。  あれはどう見ても鮫だった。
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