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東京都西多摩郡奥多摩町。
標高1005mの月夜見山の麓に、天台宗 関東本山の冥奉寺がある。
「レーヤ様、これは…」
亥の刻の少し前に着いたレーヤと瑠奈。
車を降りた瞬間に、異様な瘴気を感じた二人。
「お待ちしておりました」
門で待っていた尼僧が迎える。
真っ白な和装を見に纏い、表情は険しい。
「 蒼樹は?」
「既に始めておられます」
そこへバイクに乗った、ヒーラと真理が着いた。
ヘルメットを脱ぐ二人。
「すまないが、何か履き物を頼む」
「はい、直ぐに」
バイクから降りない真理。
その素足に気付いたレーヤである。
「ちょっと急いだもので…」
「ヒーラ、窓を破ってはいないな?」
全てお見通しのレーヤに、驚きつつうなずく。
尼僧が、僧侶用の履き物を持って来た。
「どうぞこちらを」
「ありがとうございます」
それを見ながら、レーヤが門へ向きを変えた時。
「キャ!」「ガシャン」
跨ったバイクから降りようした真理。
履き物に気を取られてか、バランスを崩してバイクごと倒れた。
「大丈夫か、マリ?」
「あぁ…バイクが💧」
真理に手を貸す尼僧。
バイクに手を貸すヒーラ。
「大丈夫です…すみません💦」
履き物を履いた真理を見て、門へ一歩踏み出す。
「キャ!」
「今度は何なの?」
呆れた声で瑠奈が呟き、二人が振り向く。
「すみません…躓いて💦」
(何やってんだろ私)
「真っ平らな路面で、躓くものか?」
バイクを起こし、点検しながらヒーラも呆れる。
しかし、レーヤだけは違った。
今度は真理が来るまで待つ。
「よほど私を中へ行かせたくないのね」
(一体何が居るのか? 楽しみだ)
「えっ? そんなつもりはないのですが…」
そう言う真理に、ニコリと笑うレーヤ。
門の石段に足を掛ける。
「キャ!」
躓く真理を予測して、レーヤが支えた。
「他心眼…か、レーヤ?」
術式に詳しく、それに長けたヒーラ。
3回目のそれで、レーヤの言葉を理解した。
「その通り。真理、君には無意識に周りの人の危険を察知し、止める能力がある」
「えっ? そんなもの私になんか…」
しかし、言われてみると、不可思議な出来事が、幾つか思い出された。
「君はその能力で、無意識に周りの人を救って来たでしょ? 私と初めて会ったカフェでも。君があの店員を呼び止めなければ、彼女は振り向いて、立ち上がった男性にぶつかり、お盆に乗せた物をひっくり返していた」
「あの時…確かに何故か嫌な感じがして、気が付いたら、用もないのに呼んでいた…」
「乗り遅れそうなバスに、友達と走っていて転び、乗れなかったバスは、その先で事故に。信号が青に変わり、渡ろうとして落としたスマホが、皆んなの前に転がり足を止め、その直後に暴走車が信号を無視して走り抜けた…」
「瑠奈さん、どうしてそれを?」
「ルナには、他人の記憶を辿る『回帰想眼』の能力があってね、君の能力は、『他心眼』と呼ばれるものよ。残念ながら、まだ自分のことは察知出来ないけど、訓練次第では感じる様になるかも知れないわ」
「そんな…全然知らなかった。じゃあ、私の内定を決めたのも、今夜呼んだのも?」
「そう、その能力は、私達の大きな救いになるもの。お互い、運命からは逃れられないものよ。許してね、マリ」
その時。
「グゥオォオー❗️」
大きな何かの咆哮が響き渡った。
真理の手を握るレーヤ。
「ルナ、ヒーラ、マリ、行くわよ❗️」
手を繋いでいると、真理が躓くことはなかった、
急いで寺の中へと駆け込む3人。
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