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考えられるのは、この壁を超えて向こう側に首があるということくらいだ。
でも、超えられるか?
壁の高さは3メートルはありそうだ。
周囲に足場になるようなものもない。
このままこの壁を登っていくのはどう考えても不可能だ。
とすると、遠回りして行くしかない。
「ねぇ、どうして大輔は来ないの?」
明宏の考えがまとまったと同時に春香がつぶやく。
後方を確認してみても大輔が追いかけてくる気配はなく、足音も聞こえてこない。
ここまで一本道だから道に迷うこともないはずなのに。
「きっと、化け物を攻撃してくれてるんだよ」
美樹が春香の手を掴んで言った。
「でも遅くない?」
確かに、化け物は一旦倒れているのだ。
そこに攻撃を加えればもう起き上がってくることもない。
それにしては時間がかかりすぎている気がする。
春香の顔色はみるみる悪くなっていき、みんな自然と無言になってしまった。
「だ、大丈夫だよ春香。大輔はバカみたいに強いんだからさ」
明宏が慌てて慰めにかかる。
それでも春香は青ざめたままうつむいてしまった。
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