神の軍団

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神の軍団

 13歳の僕は、S国の『神の軍団』に入隊していた。もう3年目になるだろうか。  もう何日も洗っていないぼさぼさの髪。脂肪と垢のこびりついた身体。煤で汚れた顔。数か月着っぱなしの迷彩服。死臭と動物臭が入り混じっていると上級の上官に嫌な顔をされたことがあったが、ここでは皆、同じような恰好なのだ。ホテルで暮らし、パソコンで戦況を分析している大人に分かろうはずもない。  ラジオからはノイズとともに、ひっきりなしに戦況が伝えられてきた。汚れた神をあがめる異教徒が、首都を死守している。僕たち『神の軍団』は首都を奪還しようと必死だ。  一週間前の戦闘では、僕の仲間2人が喪われた。アンリは頭を銃弾で粉々に砕かれ、白い脳漿を地面にぶちまけた。ヤルンは腹を機関銃で打ち抜かれ、ピンク色の大腸が腹から噴き出した。不気味にうごめく臓器、その下でヤルンは顔を真っ青にしてこの世のものとは思えない悲鳴を上げていた。  僕はそれを見ていられなくて、支給された覚せい剤を20倍の量、ヤルンに注射した。ヤルンは血を吐きながら僕に少し笑いかけ、目をつむり、二度と目を開けることは無かった。数時間、意志を持ったかのような大腸が微細に震えていた。  僕らも負けてはいない。  僕は小銃を、今考えてもどのメーカーの製品か分からない、とにかく分解と整備がしやすかった銃器をフルオートにして、汚れた神を信奉する異教徒に向かって連射した。反動が肩にかかる。100メートルほど先だろうか、耳がちぎれるほどの銃声の向こうで、3人の兵士が倒れた。  僕はさらに小銃を3点バーストに切り替え、鐘楼に登った兵士を狙撃した。200メートル以上先の相手を倒せる能力のある『神の軍団』兵士はそうはいない。僕は天性の運動神経と『儀式』によって力を得た。
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