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治療
僕はジャングルで半死半生だったところを、S国の児童保護団体に救出された。それを認識できた時は、保護から一月ほど経った時だ。
最初は、何も信じられなかった。夜半、抜け出そうと思った時は何度もあったが、幸か不幸か身体が動かなかった。左足は痛むし、覚せい剤の禁断症状でいつも冷や汗をかいていた。
働かなくとも毎食暖かいスープとパンが出され、戦場の悪夢が襲ってきた夜には若い女の職員がぎゅっと抱きしめてくれた。抱いてくれるような優しい女の人に出会ったのはおかあさんを除いて彼女だけだった。
禁断症状が消えたころ、僕は『神の軍団』が児童を兵士にする恐ろしい組織で、S国の人間は汚れた異教徒などではないと理解した。先輩の、といっても僕より2つか3つ年上の少年、ヨサが教えてくれたのだ。
ヨサだけが知っている秘密がある。
僕は覚せい剤の後遺症でたまに戦場がフラッシュバックする。大抵は蒸し暑い夜だ。保護されてから何度か寝小便をした。そんな恥ずかしい思いをしても、ヨサは笑って寝具を洗濯してくれた。
これから僕がやらねばならないことは何か。
漠然とした思いだが、傷が癒えたころ考えた。
まずは知識だ。
政府主催の無料の学校で、僕は寝食を忘れて勉強した。少年兵の時代は一度教わったことを二度聞くと、容赦なく懲罰のタバコが押し付けられる。その成果かどうか分からないけれど、僕の学習の速度は同年代の子が舌を巻くレベルだった。
これからの人生で大切なのは英語だ、と直感した。だから僕は、保護団体員となるべく英語で話した。
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