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再び
気付けば朝だった。
スマホを確認した。やっぱり着信はない。
少しモヤモヤしたが、もう、いい、忘れよう。会社に行かないと…。
昨日のことはなかったことにしよう。
いつもの日常でいよう。気持ちを切り替えることにした。
会社の近くの信号待ちでぼんやりしてると、向こう側に見慣れた人がいる。
えっ、中山さん?何で?何?何でここにいるの?
もう、朝からやめてほしい…、梨花はどんよりとした気持ちになった。
中山さんも梨花に気付いている感じだった。
信号が青になると中山さんが駆け寄ってくるのが分かった。えー、私の方に来る?まさかね…、私ったら自意識過剰…そう思ってると
『田中さん、ごめん』
中山さんが謝ってきた。
『おはようございます』
梨花はなるべく自然に足を止めることなく挨拶はした。
『違うよ、田中さん、昨日は電話ができなかったんだ』
下手な言い訳やめてほしいわ、も〜、
3回かけるとか言ったくせに電話ができなかったなんて…、電話一本かけれないってどういう状況よ…
梨花はため息が出るのを我慢した。
そんなこともお構いなしに中山さんは横に並び歩きながら続けた。
『電話、できないよ。だって俺、田中さんの電話番号知らないよ』
『えっ、私の番号知らない???』
梨花は一瞬考えた。
ちょうど信号も渡り終えた。思わず立ち止まった。同じく中山さんも立ち止まった。
『俺、昨日、自分の番号は渡したけど田中さんの電話番号を聞いてなかったんだよ』
『本当にごめん』
中山さんは深く頭を下げた。梨花は慌てた。
『ご、ご、ご、ごめんなさい』
『私、ごめんなさい。私も気付いてなかった』
お互い顔はひきつっていた。思わず笑い出した。
『今日、時間ある?今日は外周りがないから定時で上がれると思うんだ。お詫びに今日、食事できないかな?』
『お詫びってそんな…、私の方こそ…、あっ、時間は大丈夫ですよ』
『じゃ、ここに18:30に待ち合わせでいいかな?』
『今度は必ず!また!』
それだけ言うと、健史さんは慌てて走って行った。
えっ、電話番号…、そうだよね、私ったら何で気づかなかったんだろう。
私がかけたら良かったんだ。いや、違う、私があの時私の番号を教えないといけなかったんだ。あー、もう、何やってんだろう。
悔やみながらも気分は軽くなった。
今日も仕事頑張ろうっと。残業になったら大変だわ。ちょっと空を見上げ梨花は足取り軽く会社に向かった。
健史さん、会社間に合ったかな?
朝から待っててくれてのかな。梨花は嬉しくてたまらなかった。
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