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思い出話
成徳は我に返り、静美と良枝を再度見る。
二人は成徳を見ていた。
成徳は驚き、二人に会釈する。
それを見た良枝が、その場で会釈をした。
静美だけが成徳に近づいてくる。
「良枝おばさんがお父さんと話したいって」
静美はそう言うと、成徳から離れ、良枝のいるところへ戻る。
今度は、良枝だけが成徳に近づいて来た。
成徳は再度、良枝に会釈する。
「今まで静ちゃんの事ありがとう」
良枝はそう言って、深々と頭を下げた。
「頭を上げて下さい。私もあなたに感謝しています」
頭を下げてきた良枝に、成徳は動揺する。
「こちらこそ、ありがとうございます」
成徳も頭を下げる。
5秒ほど経っただろうか?
成徳が頭を上げると、良枝も頭を上げていた。
目があった二人は、互いの顔を見て笑った。
「和枝が死んでからは、良枝さんに大変お世話になりました。私一人では、静美を育てられなかった。あなたのフォローがなければ、無理だったと思います」
「そんな事ないです。成徳さんも頑張ってました。静ちゃんから成徳さんの悪口を聞いた事ないです」
「そうですか、あいつとよく喧嘩してましたよ」
そんな会話をしながら、二人から笑みがこぼれる。
「思い出します。静美の事であなたと喧嘩しましたね」
「そんな事ありましたね。姉さんが死んだ時、静ちゃんの事が心配で仕方なかったわ」
「私も不安でした」
成徳はそう言うと、顔を上げて天井を見た。
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