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お通夜にて
あれは、和枝のお通夜を終えた時だった。
成徳は和枝の遺影を見て、故人を偲ぶ。
静美は成徳の右膝に頭をのせて、スヤスヤと寝ている。
その姿は、寂しそうに見えた。
成徳は「静美」と声をかけながら、寝ている彼女の頭を撫でる。
その時、良枝が成徳の前に現れた。
「静ちゃんを引き取りたい」
あまりにも唐突だった。
成徳は唖然とする。
何も言わない成徳に、良枝は「静ちゃんを引き取りたいんです。本当の親子じゃないあなたに、静ちゃんを育てるのは無理でしょう」と声を荒らげて言った。
成徳の眉間にしわがよる。
「静美の前で言わなくてもいいだろう」
成徳が怒鳴る。
「真実でしょう」
良枝は言い返した。
二人は睨みあっていた。
その時、静美が目を覚まし「パパ」と言って、成徳に抱きついた。
成徳は静美を抱きしめた。
「静美を離したくない」
成徳は良枝の顔を見てそう言った。
良枝は何も言わず、成徳のそばから離れない静美の姿を見ていた。
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