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「おはようございます!」
來未と栞は、着替えを終え、事務所でタイムカードを切り、ホールにやってきた。
すると、後輩でキッチン担当の藤井弘樹(25歳)が、カウンターを挟んだ隣のキッチンで料理の仕込みをしていた。
※藤井弘樹の特徴。身長170センチで、肩まで伸びた黒髪を後ろで一つにまとまとめ、來未と同じ但しリボンの色はパステルピンクではなく、パステルブルーのリボンでで1つ束ねている。
あと、全体的に細身。男子の制服は、パステルブルー色のシャツに、黒いズボン。靴は、ホール担当は黒の革靴、キッチン担当は、白いの作業靴。
更に、キッチン担当は、その上から黒いエプロンをつける。
「あぁ! 七橋先輩おはようございます…って先輩どうしたんですか? その顔」
藤井は、仕込みを一旦切り上げ、來未に声を掛ける。
だか、すぐさま、來未の目の充血に気が付く。
「あぁ! ちょっと寝不足で! だから気にしないで」
「そうですか? でも、本当に本当に大丈夫ですか? 体調が悪いなら休んだ方が…」
藤井は、心配そうに來未に声を掛ける。
「ありがとう! でも、本当に大丈夫だから」
「七橋先輩がそこまで言いうなら…でも無理しないでくださいねぇ?」
「ありがとう!」
「おい! 私のこと忘れてない?」
二人だけの世界になりかけたところに栞が堪らず声を掛ける。
「あっ! 神林先輩居たんですか?」
「居たよ! 最初から!」
「そうだったんですか? それはすみませんでした」
悪びれることなく栞に対して頭を下げる。
「ぁぁぁぁはぁはあは! 藤井あんたも言うわねぇ? そりゃあ私よりか來未の方が全然可愛いし、護ってあげたいって思うわよねぇ?」
「そそそそれは…」
栞からの問いかけに藤井はタジタジになる。
「こら栞! 彼氏が仕事って忙しいからって藤井君をいじめないの!」
二人の間に割って入り、栞の頭を叩く。
「來未! なに言ってるの! あんた!」
急に頭を叩かれた上に、個人情報をばらされてしまった栞は、顔を真っ赤にしながら來未に襲い掛かる。
「ごめんごごめん。でも、あんまり藤井君にばっかりちょっかい出してると彼氏が嫉妬するよ!」
「來未!」
「ああぁの? 先輩方?」
栞の言葉にタジタジしていた藤井が申し訳なさそうに二人に声を掛ける。
「あぁごめん」
二人は、同時に藤井の方を見る。
「いいえ! 自分が悪いので! 神林先輩すみませんでした」
藤井は、栞に向かって頭を下げる。
「ぁぁ! 私こそ、憎たらし事言ってごめん」
お互いに頭を下げあう栞と藤井。
「よし、仲直りの握手をしよう!」
二人の手を取り、強引に握手をさせる。
「ッくくく來未!」
「七橋先輩!」
來未に手を掴まれた栞と藤井は、とくに藤井は恥ずかしそうに彼女の顔を見る。
しかし、肝心な來未は藤井のそんな表情に気づく事はなく…
「栞! そして藤井君! これに懲りてもう喧嘩ダメだよ! とくに栞、貴方は、先輩なんだから! 解った?」
「…はい。藤井も悪かったよ!」
「いえ? 僕もちょっと言い過ぎました」
改めて頭を下げる二人。
☆
「今更だけど、今日のキッチンは藤井君だけ?」
カフェ rose (フランス語でピンク)には、自分達を含め、10人(男5・女5)のスタッフが働いており、それぞれキッチン担当5人(男3人・女2人)、ホール担当(男2人・女3人)で働いている。
但し、お互い忙しい時は担当関係なしに手伝う時もある。
そして、その中で來未と栞は、ホールを担当している。
先にきていた藤井に、今日は、これで全員なのか尋ねる。
rose (フランス語でピンク)は、カフェ自体は、小さいが結構な人気店。
なので、いつもランチ時になると店の中が人で一杯になる。
「いえ如月(20)が今ゴミ出しに行ってます」
「如月君?」
一瞬、そんな子居たっけ? 首を傾げる來未。
「藤井先輩! ゴミ出し終わりました。あぁ! 七橋先輩、神林先輩おはようございます」
入口の扉が開き、ゴミ出しを終えた如月隼人が中に入ってきた。
そして、藤井と一緒にいた來未と栞に気づき、挨拶をしてきた。
來未と栞はそんな如月に、おはようと挨拶を返した。
すると、如月は二人に軽く会釈を返すと、藤井の方に掛け寄り、
「そうだ! 藤井先輩! 自分いまからちょっと出てきます」
「えっちょっと待て! まだ仕込み終わってないよ!」
いま、如月に抜けられると営業開始までに仕込みが終わらない。
「すみません。それが…」
如月は、突然店長から、20日から始まるクリスマスイベントに出すお菓子の試作品を作って欲しいと頼まれた。けど、その材料が今、店にないから今から買ってくるよう頼まれた。
「全くあの店長は…解った。仕込みは俺一人でなんとかやっとくから」
店長の突然の思い付きは困ったもんだ。
それでも、店長の命令なので逆らう事はできない。
「ありがとうございます」
「大丈夫だから! 気を付けていってこい!」
「はい!」
そう告げると今度は、財布とスマホを持って入り口から出ていった。
「大丈夫かあいつ?」
出ていった如月を心配そうに見送る藤井。
「藤井君!」
「ぁぁぁすみません!」
「藤井君? 大丈夫?」
來未が心配そうに藤井に声を掛ける・
「あぁはい大丈夫です。一人で仕込みをする事時々ありますから」
「そうじゃあなくて…」
今まさに如月が出ていた入口の方を見る。
「あぁぁ如月の事なら大丈夫ですよ!」
「でも…私、一瞬とは言え、如月君の存在すっかり忘れたし」
「大丈夫ですよ! あいついちいちそんなの事気にしませんよ! それに、さっきの会話だってあいつには聞えてませんよ」
「でも…」
そう言われても不安が消えない來未。
「だったら七橋先輩! 如月が戻ってくるまで料理の仕込み手伝って貰えませんか?」
「えっ?」
藤井からの提案に驚く來未。
「藤井! ちょっとあんた! どういうつもりよ!」
そんな提案に待ったを掛ける栞。
「こっちは如月と二人でやっていた料理の仕込みを一人でやらないといけないんですよ!」
「如月君あとどのくらい仕込み残ってるの?」
「ちょっと來未? あんた仕込みを手伝うつもり?」
「だって、料理の仕込みが終わらないとお店開けられないんだよ! それに、ホール内の開店準備なんて私がいなくても栞、一人でできるでしょ?」
「それはそうだけど…あぁぁもう解ったわよ! 藤井! 如月が戻ってくるまでだからねぇ!」
「解ってます! いきましょう先輩!」
「うん! じゃあ栞! ホールお願いねぇ!」
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