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「いただきます」
來未達スタッフは、事務所の隣の休憩室で食事を食べる。
休憩室は畳張りで、部屋の真ん中にテーブルが置かれているだけで座布団などは置かれていない。
なので、必要な場合は、自分で用意しなければならない。
でも、昼寝をするのには最高。
來未は、賄のオムライスの真ん中のケチャップがついている部分をスプーンで一口に取り口に運ぶ。
口に運んだ瞬間、中のケチャップライスとそのライスを包む半熟卵がご飯とうまく口の中で混ざり合ってさらに美味しいさを引き出す。
「…美味しい」
來未は、いつもお弁当なので、久しぶりに食べて賄のオムライスの味に思わず感動してしまった。
でも、すぐに…思い出してしまった。
同棲していた頃に、総一郎さんが私の為だけに作ってくれたオムライスの味を。
総一郎さんは、料理は、あまり料理が得意な方ではない。來未も、そこまで料理が得意な方ではなかった。
仕事上、時々キッチンを手伝う事もあるが、料理の手順が書かれたマニュアルがあるので困る事はほとんどない。
なので、彼と同棲を始める1年前まで、殆んど料理のレパートリーがなかった。
それでも、彼は、私が作る料理やお弁当を喜んで食べてくれた。
同棲を始めて数か月経った頃、総一郎さんが初めてオムライスを作ってくれた。
でも、見た目は、オムライスの顔である卵がところどころ破けていたり、中身のケチャップライスも、ケチャップの量が少なかったのか全体的に薄い味だった。
それでも、総一郎さんが自分を想い、作ってくれたオムライスは自分が今まで食べてどのオムライスよりか一番美味しかった。
「おおお美味しい…美味しいよ」
來未は、二口目のオムライスを口に運ぶ。
『お前とはただの遊び! 俺、他に本命の彼女居し、なんならその彼女と来月結婚式挙げるつもりだから』
(…総一郎さん。総一郎さんさん)
來未は、泣きながらオムライスを食べ続けた。
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