◇鈍感な君

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◇鈍感な君

 もう1回やれば満足すると思っていた。  それなのにまたしてくれる?と問いかけて家を訪れるようになっていた。  回数を重ねて、ゆうくんの人柄に触れるようになってどんどん惹かれていくのを止められなくなった。  ゆうくんは驚くほどに鈍感。  こんなに誘ってたらちょっとは気があるのかなって思わない?  相変わらずゆうくんの中の俺は、憧れのハルさんのまま。  どうやったら1人の男として意識してもらえるんだろう。  はぁ、とりあえず今日もゆうくんに会いに行く。 「あの、ハルさん  好きな人がいるですか!?」 「ん??なに?」 「だって、書いてたじゃないですか  好きな子がいるって」 「あぁ……」  そうか、この子は俺のSNSチェックしてるんだった。  迂闊に書き込みできないな。   「やめないですよね?」 「何を?」 「動画上げるの」 「えーと」 「やめないでほしいです  僕、ハルさんじゃないとダメなんです」 「いや、動画じゃなくて  本人目の前にいるし  何回でもしてあげるんだけど……」 「動画が見たいんです!!」 「えぇ――……」  俺がここにいるのになんで動画なわけ? 「俺が他の子とエッチしても、ゆうくんは別に気にならない?」 「そうですね、だって今までたくさん見てきたし?」  そうなんだ。  俺って、ほんとに意識してもらえてないんだ……。  もう諦めたほうがいいかな。 「ハルさん?」 「やめないよ」  嘘をついた。 「そうですか、よかったです  新作楽しみにしてますね」  純粋に楽しみにしてるんだろうな……。  はぁ、もう他の人とやるつもりないんだけど。  現に断ってるし。 「ゆうくんにとって俺ってどんな存在?」 「憧れの人、ずっとそうです」  はにかんだ笑顔でそう言った。  こういう顔もかわいいんだよな。  もう、なんでもいっか。  ゆうくんに嫌われてるわけじゃないし。 「そっか、ありがとう」 「いえ  好きな子ってどんな人なんですか?  ハルさんの会社の人とか??」 「……ナイショ」 「ナイショかー  きっと素敵な人なんでしょうね」 「そうだね、とてもかわいくていい子  だけど鈍感で……ずっと恋い焦がれてるよ」  ゆうくんの目を真っ直ぐに見つめて言った。 「ほぉー、ハルさんにそんな風に想われるなんて  すごいな  あれ?僕と過ごしてていいんですかね?」 「今日はちょっと激しくしてもいい?」  ゆうくんの質問に答えることなく言った。  俺が過ごしたいのは他の誰でもなく、君だからね。 「あっ、はい  大丈夫です」 「じゃあ遠慮なく」  声を出させたくないから、家ではあまり激しくしたくなかったけど、我慢できなかった。  君なんだよ、僕が恋い焦がれてるのは。  どうやったら気づいてくれる?  こんなに激しく愛してあげてもダメなの?  他の人と過ごす余地がないくらい君に会ってるのに。 「アッアッ……、ハルさん  イッちゃう……気持ちいい……  ハルさん」  手を伸ばして縋る君を抱き締めて、また激しく突き動かした。  何度も何度も俺の動きに合わせて嬌声を上げる。  やっぱり好きだ。  最後は手を握って、ゆうくんの奥で果てた。  繋がったまま、優しく口づけをする。 「抜かないんですか?」 「もう少し、このまま  ダメ?」 「いえ、いいです  ギュってしてもらえますか?」 「また憧れのやつ?」 「はい……そうです」 「いいよ」  ギュっと抱き締めてあげる。  役得……だな。  心の中で苦笑しながら、ゆうくんが満足するまで抱き締め続けた。
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