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◆ハルさんじゃなきゃ
今日も飽きずにハルさんの動画をチェックする。
相変わらず新作は上がらない。
そういえば、僕と初めてしたときの動画は上げないのだろうか?
あれ、その後は撮ってないけど良かったのかな?
好きな子って僕だったりしないよね……?
そんな事ありえないって思っているのに、心のどこかでそうだったらいいのにと思ってしまう。
ハルさんが僕にとって憧れの存在であることには変わりない。
でも憧れだけでは片付けられない想いを抱くようになっている。
ここ最近は忙しいみたいで会えていない。
動画を見ていたら少しムラムラしてきた。
手を伸ばして、少し勃ちはじめたものを触る。
あっ、ディルドとローション出しておかなきゃ。
お気に入りのディルドを置いて、動画に集中する。
はぁ、かっこいい。
この人が自分を何度も抱いてくれてるなんて信じられない。
「ハァ……ハルさん……
アッアッ――」
いつの間にか動画ではなくていつも抱いてもらってるハルさんの姿を思い出していた。
僕を見つめる眼差し、息遣い、いつもどんな風に触れられているか……鮮明に思い出せる。
ハルさんは僕が望む事を何でも叶えてくれる。
指を挿れて、物足りなさを感じる。
ハルさんの指ならもう少し奥まで入るのに。
指をやめてディルドを取り出す。
「ンッ……」
ハルさんとエッチするようになってから、出番がなかったディルド。
こんなんだったかな……。
前までこんなふうにしていたはずなのに……。
「アッ……」
必死に動かして快感を得ようとするけれど、前のようにうまくできない。
「ンッ……ンッ――」
ダメだ……。
うまくイケない……。
諦めてディルドを取り出す。
不完全燃焼のまま横たわる。
ハルさんがいい。
目を閉じてハルさんを思い浮かべているとインターホンが鳴った。
どうしよう、出られる状況じゃない。
そのままいないふりをした。
また鳴った。
無視すると、また鳴った。
しつこいな。
ティッシュで拭いて立ち上がり画面を確認した。
玄関のインターホンを鳴らすのはハルさんしかいない。
慌ててパンツとズボンを履いて玄関に行きドアを開けた。
「ハルさん?」
「入ってもいい?」
あっ、マズイ
全部出したままだ。
「ちょっと待ってもらえませんか?」
「待てない」
「……じゃあどうぞ」
どうしよう。
見られたくない。
部屋に入ってベッドの上に散乱しているディルドやらティッシュやらを見られてしまう。
「声聞こえたんだけど、やっぱりやってたんだ」
「すみません、また聞かせてしまって」
「なんで1人でやってるの?
なんで俺に連絡しないの?
1人でやる方がいい?」
「そうじゃないけど
ハルさんにエッチして下さいなんてお願いできないし」
「は?
それで1人でやってたの?」
「はい」
「ねぇ、俺がさ、
なんでゆうくんの家に来たりホテルとかご飯に誘ったりしたと思う?」
「ご近所だから……?」
「そんな訳ないでしょ
ゆうくんが好きだからだよ」
「えぇ!?」
「こんなにアプローチしてんのにぜんっぜん気付かないし」
パニック。
僕がハルさんの好きな人!?
「俺の事好き?嫌い?
どっち?」
「そりゃ好きです」
「じゃあさ、俺と付き合ってくれない?」
「僕とハルさんが恋人になるんですか!?」
「いや?」
「嫌じゃないです」
「金曜日の夜空いてる?」
「はい、空いてます」
「初めて会ったカフェで待ち合わせ
その後ホテル行くから」
「ホテルですか?」
「俺がどれだけ好きか、まずはその体に教え込むから
ここじゃ本気出せないし」
「本気……」
「今日は優しく抱いてあげる
いってないでしょ、まだ?」
「分かりますか?」
「イクときの声じゃなかった」
「1人じゃ全然イケなくて
いいんですか?」
「当り前じゃん
おいで」
ハルさんに近づいた。
優しくキスをしてくれた。
「ハルさんとしたいって思ってたんです
ハルさんじゃなきゃダメだって」
「はぁ、やっぱりかわいいね、ゆうくんは
俺じゃなきゃダメな体になったんだ」
キスをしながら服を脱がされる。
「んッ……はい……」
「今日はどうして欲しい?」
「いつもみたいにいっぱいキスしながら奥突いて欲しい」
「分かった」
絶え間なく押し寄せる快感に身を委ねた。
欲しかったものを与えられて、心も体も満たされる。
「ゆうくん、こっち来て」
優しくキスをして抱き寄せられた。
「あの、ハルさん」
「ん?」
「動画ってもう上げないですよね?」
「やめるに決まってるでしょ
ゆうくん以外とするとかおかしいじゃん」
「そうですよね……消さないですよね?」
「全部消すよ」
「えっ、消しちゃうの!?」
「なんでここに俺がいるのに、そんなに動画がいいの?
ショックなんだけど」
「だってハルさんを見る事が習慣になってるから」
「じゃあ、データあげるよ」
「いいんですか!?」
「そんな喜ぶんだ……
生身の俺の事もちゃんと見てね」
「ちゃんと見てます
僕と最初に撮った動画はあげなかったんですか?」
「誰にも見せる訳ないでしょ
あれは特別なものだから」
「そっそうなんですか」
何だか照れてしまう。
「はぁ、帰りたくなくなるな」
「お仕事ですよね?」
「うん
ゆうくんは?」
「明日は午後だけです」
「ふーん、そうなんだ」
ハルさんが体制を変えて僕に覆いかぶさってきた。
「あの、ハルさん?」
「ちょっとくらい無理させても平気だよね?」
「えっ、いや、そんな事は」
「もうちょっと付き合って」
そう言ってまた僕の中に入ってきた。
あぁ、ダメだ。
絶対に断れない。
この気持ちよさを知ってしまっているし、何よりも僕はハルさんのことが好きだから。
そうして、ハルさんが満足するまで僕はいかされ続けた。
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