三上隆文と河野健二1

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三上隆文と河野健二1

 南沢修の遺体発見から一か月が経過した。  遺体の発見が十二月も半ばであったため、この件についての報道や興味は、年末から年始にかけての特番にかき消されるだろうと思われた。だが、現役国会議員の息子の殺人事件、さらには影のドンと呼ばれる仙谷直哉と、日本最大の暴力団、佐川組との癒着が明らかになった事により、永田町界隈までその火の粉が降り注いだ。結果、数人の現役国会議員が辞職に追い込まれる大事件となり、未だにこの話題がワイドショーを飾っている。  だが、民衆の関心は、そんな政治的な事よりも、例のカップル殺人に携わった南沢達三人の殺害、更には、それを隠ぺいした仙谷直哉及び南沢潤一郎への制裁を成功させた犯人を英雄視する声で溢れている。  いつもなら、ここで警察の隠蔽体質や、初動捜査の不手際など、警察に対するバッシングの嵐となるはずであるが、今回はこの件に対して独自の取材を行い早い段階で、それを放映した麗奈のおかげで、むしろ千葉県警警察本部は、世間から賞賛される結果となっていた。 「麗奈さんには感謝しかないですね」小出がルアーをいじりながら言った。 「ああ、彼女のおかげで俺たちまで英雄視されてるしな」鳴沢が自分の頭をなでる。 「納得いかないわ! 犯人は捕まってないのよ!」麗子が鳴沢を睨めつけてから、武男に向きなおる「ボス! これで終わりでいいんですか?」 「いや、その前に今、津島に調べてもらっていた事がある」武男が眼鏡を押し上げ、津島に目線を送った。
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