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告白1
武男は日暮里のバーで川島医師を待っていた。約束通りカウンターの右端に座り、バーボンを注文した。約束の時間になったところで店のマスターに声をかけられた。
「北川さん? ですか?」
「はい……そうですが……」
「川島先生からお預かりしています」そう言ってマスターは鍵を武男に渡した。
「先生のクリニックはこの先の大通りを左折して五百メートル程行くと左手にあります。四階建てのビルの三階がクリニックで、四階が先生の自宅です」
「なぜ、貴方が?」
「川島先生とは長年の付き合いです。先日頼まれました」
「そうですか……」
武男は鍵を受け取り、川島のクリニックに向かった。途中、津島に電話をした。
クリニックの扉には閉院のお知らせが貼ってあった。日付をみると昨年の十一月、つまり昨年、彼とさっきのバーで飲んだ翌月には閉院していたことになる。
四階に上がり、扉がロックされていることを確かめ、鍵を差し込んだ。
マスターから鍵を渡された時から予想はしていた事だったが、こうして目の当たりにするとやはり動揺する。
ベッドに眠る川島は安らかな表情だった。隣には点滴のバックと機械がセットされていて、そこから出たチューブが川島の腕につながっている。
ベッドの隣のガラステーブルの上に、北川武男様 と書かれた封筒とSDカードが目に入った。
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