浩一と加奈子3

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浩一と加奈子3

 それが五年前、あれから十八年という時を経て偶然、この場所で二人は再会した。  加奈子は、薬の納品でたまたま、このクリニックを訪れたのだ。  差し出された名刺には、薬の卸 関東薬品 千葉南営業所 営業部主任 多良間加奈子 と印刷されていた。苗字は変わっていなかったが高校生の娘と二人暮らしだという。  十八年前の出来事がまるで昨夜の出来事のように浩一の脳裏に甦ってきた。 お互いその場に立ち尽くし、二人の頬を涙が伝っていった。  加奈子は借金返済後、薬品の卸会社に勤務し、現在は千葉で娘と二人で暮らしている。未婚の母だという。  その日は、浩一が注文した薬が近くの問屋の営業所に無く、たまたま急ぎの注文であった為、千葉営業所から直接、加奈子が持参したのだという。浩一はこの偶然に感謝した。話したい事が山ほどある。  この日、二人は連絡先を交換して別れた。  加奈子は今度、娘を連れて遊びに来ると約束した。娘の名は絵里と言った。   幸せな時が再び訪れた。  あの時、将来ある浩一の足手まといにならない為、加奈子は身を引いたのだ。  借金と幼子を抱えた女がどんな苦労をしてここまで頑張ってきたのか想像も出来ない。  二人の付き合いが再開して数か月経った頃、浩一は加奈子にプロポーズした。彼女は泣いて喜び、その日、絵里は浩一の子であると告白した。  だが、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。プロポーズから僅か二週間後、絵里は行方不明になり、それから半年後、半分白骨化した状態で発見された。場所は富士山麓。自殺の名所である。遺書も何も無く、決め手はDNA鑑定だった。絵里は首をつっていた。  自殺の原因に全く心当たりが無かった加奈子と浩一は、複数の民間調査会社を使って調べたが、原因どころか失踪当日の彼女の足取りさえつかめなかった。  絵里は失踪当日の夜、塾での目撃を最後に消息を絶っていた。  絵里の埋葬から半年後、加奈子も後を追うように亡くなった。衰弱死だった。
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