67人が本棚に入れています
本棚に追加
現れた男2
「―川島先生が多良間絵里さんの死について調べていた事は存じています」
「……」
「ご不快な思いをさせてしまったらすみません。私は息子の死について調べていたところ、息子が自殺したとされる日の夜、息子と多良間絵里さんが一緒にいるところを目撃した人物に話を聞くことが出来ました。その日は絵里さんが失踪した日でもあります」
「え?……」
「やはりご存じありませんでしたか」
「それがなにか、絵里の自殺と―」
富永は川島の言葉を制して言った「私は調査会社を使って多良間絵里さんについて調べました。そこで、川島先生が多良間絵里さんの自殺について調べていた事がわかりました。先生は絵里さんの自殺に疑問をお持ちですよね?」
「…………」
「先生は絵里さんのお母さんである多良間加奈子さんの遺体を引き取り、絵里さんと加奈子さんを埋葬されています―どういったご関係か存じませんが、少なくとも先生にとってとても大切な人であったのだと……」
「…………」
「勝手な事をして大変申し訳ありませんでした。ですが―博孝と絵里さんの死は疑問だらけです。少なくとも、博孝が自殺など考えられません……」
「絵里は私の娘です」そう言って浩一は、自分と多良間加奈子の関係について説明した。
富永は博孝という当時高校三年生の息子を亡くしていた。市原の街はずれにある廃ビルの屋上から身を投げたのだという。遺書は無かったが警察の説明は自殺。学校側の説明でもいじめ等は無かったという。
警察の説明に不信感を抱いた富永は独自に調査を続け、最近になってやっと有力な目撃証言が得られたのだという。
最初のコメントを投稿しよう!