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現れた男4
富永の説明を聞き、しばらくしてやっと浩一は口を開くことが出来た。
「絵里も……その塾に通っていました……それは……その話は間違いないのですか?」
「はい」
「その少年が博孝君だと?」
「はい。間違いないと思います。博孝の身長は一八六㎝です。それにボールペンを試し書きしたのは左手だったと言っていました。博孝は左利きです」
「それが本当なら……」
「はい―二人共、自殺などあり得ないと思います。私はまだボールペンを受け取っていません。先生も……」
「はい。インク瓶は私に買ってくれたものだと思います」浩一は胸ポケットから万年筆を取り出して見せた「私もインク瓶は受け取っていません」
「あの晩、博孝と絵里さんは数人によって拉致され、暴行の後殺害された。そして何か大きな力が動いてそれをもみ消された……私はそう確信しています」
「は?―そんな事……」
「私も最初はそう思いました。ですが……」
「何か他に証拠でも?」
「川島先生は絵里さんが自殺したと思いますか?」
「いえ……」
「そう……自殺なんかじゃありません。殺されたのです」
「殺された……」
絵里の自殺に納得できなかったのは加奈子であり、浩一だった。富永の話を聞かなくても、不審な点だらけだった。
「貴方はいったい……」
「はい。私は警察とはまた違うネットワークを持っています。まだ確定には至っておりませんが、いずれ必ず……」富永は拳を握りしめた。
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