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ホワイト興産4
武男が口を開こうとしたが、小松に制された。
「そのへんのところは話すと長くなる。後で資料をやるから、自分で調べろ。お前の事だから、いや、警察の結論を根本から覆す情報だ。自分で裏を取らなきゃ納得できないだろ」
確かに、小松の言うとおりである。
「では、仮にお前の言った事が真実だとしよう。それとホワイト興産がどう関わっているんだ?」
「荻原をハメた奴らは三人……その全員があの事故後、二年以内に死んでいる。奴らは俺が言うのも何だが、いわゆる社会のダニ。ゴミ以下の連中だった」
「それがホワイト興産の仕業だと?」
「そうだ」
しばらくの間、と言っても十数秒くらいだろうか、誰も口をきかなかった。小松の舎弟達も、顔色からすると、初めて聞いた話のようである。
「まるで…」武男が言いかけた言葉を小松が引き継いだ「ダーティハリー……映画のようだろ」鳴沢と、黒スーツの一人が軽く笑ったが、若い方のスーツ(多分三〇代半ば)はなぜ二人が笑ったのか分からないという顔をしていた。
「映画と違うところは……ホワイト興産にはスポンサーがついているというところだ」
「スポンサーだと?」
「ああ、大企業か政治家か……警察って噂もある……」
「世迷言だ! 信じられない。そもそも、何でお前ごときがそんな事を知っているんだ」武男が興奮して立ち上がる。
「俺は会った事があるんだよ」小松が呟く。
「あ? ホワイト興産の連中にか?」
「他に誰がいる」
「百歩、いや千歩譲って、その話も真実だとしよう。それをどうして俺に話す。偽善者がダニをいくら始末しようが俺の知った事じゃない」武男は興奮していた。頭の中でいろいろ考えてはみたが、答えをはじき出す事が出来ない。難しい方程式を解いているのだが、何が解らないのか解らない。そんな感じだ。
「おいおい、サツの言葉とは思えんな」そう言って小松は武男に座るよう即し、グラスを進めた。
「奴らは偽善者じゃない。かといって正義の味方ってわけでもない。依頼を受けて仕事をする。まあ、分かりやすい言葉でいえば殺し屋だ。奴らは自分達のことを掃除屋だと言っていた。ただ、ターゲットは法で裁けない、もしくは表には出てこない極悪な連中に限られている。俺が言うと説得力がないが、まさにダーティハリーだな」そう言って小松は笑ったが、今度は誰も笑わなかった。
「で、俺にどうしろと言うんだ! その善意の殺し屋達を捕まえろとでも言うのか? それとも、黒幕を暴き出せとでも? そんな事をしてお前に何の得がある? そもそもお前はそいつらに女房の敵を取ってもらったんじゃないのか?」武男は声を荒げてまくし立てた。怒っていた。いや、自分でも何を言っているのか理解出来ていなかった。
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